公平と、少しのとくべつ
「ふふ。ひどいな、礼。俺がマコにそんなこと言うっておもってるんだ?」
『優児は、そういうひとよ。だから、マコには、優児のことばが、嘘かほんとかわからない。好きってことばを、笑いながら言って、本気にさせないのが優児よ。あれほど真剣なマコに、真剣に受け止めさせないなんて、優児にしかできない芸当』
「ちがうよ。マコが、嘘にして欲しいとおもってるんだ。嘘だと思い込める証拠ばかりを見て、真剣さには目を向けようとしないだけ。マコはずるいんだ」
『うそ。そうでいてくれなきゃ、優児が困るんでしょう?』
「……うん。困る。困るな。マコには、一生知らずにいて欲しいから。気づいて欲しいけど、ぜったい、気づかれたくないんだ」
『ふくざつだね』
「俺、マコにはぜったい、最高の男にふさわしく、最高にしあわせになって欲しいからさ」
『優児がしあわせにしてあげたらいいじゃない』
「できるわけない。俺は、マコにとって、最低で、最悪の相手だよ。何があっても、こいつとだけはくっついちゃいけない、っていう相手。まあ、結ばれっこないけどね」
『ふくざつなのは……男同士だから?』
礼の声が、とたんに沈む。
「そうだね。半分くらいは、そうだとおもう」
『魔法のように性別が変えられたら、いいのにね』
「ほんとうに、そうおもう? 俺が女として目の前に現れたら──マコはきっと、俺を見てもくれないんだ。今はサッカーしかいらないって、そのひと言で、記憶からも抹消されてしまうんだよ」
『優児……』
「だから、俺はサッカーをやっていて良かったっておもう。男で、良かったよ。仲間としてなら、マコのいちばん大事なものの一員でいられる。どんなに目障りで嫌っていても、俺のことだって、マコは公平に、区別なく、仲間として扱ってくれるから」
『一員で、いいの? 公平で、うれしいの?』
「──うれしいよ。それ以上なんて、望まない」
『そう……』
「だからこそ、仲間としても見てもらえなくなるようなことはできない。ぜったいに、できないんだ」
そう、ともうひとつ、礼が応じた。
「礼、もう寝る?」
『ううん。優児が起きてたいなら、朝までつき合う。ほんとうは眠った方がいいんだろうけど。優児はきっと、次のトレセンに選ばれようが、選ばれまいが、どうだっていいのよね?』
「うん、そう」
『優児らしい』
「でも、まあ、マコが行くところなら、なるべくいっしょに行きたいな。それにね、いつもとちがうメンバーに囲まれてると、マコがほんの少し、とくべつ扱いしてくれるんだよ」
『とくべつ扱いって?』
「本人、無意識なのかもしれないけど。俺を目で探して、見つけたとたん、ほっとした顔してる。どこで、誰といてもね、俺がどこでどうしてるか、ちゃんと気にかけてくれてるんだ」
『へー。さすが、マコだね』
「俺と同室だって聞いたときも、ほっとした顔してた。初対面のやつといっしょだと、きっと気をつかうんだろうね」




