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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
4:性衝動/高1
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二人部屋

深夜の電話に、うっすらと緊張した声が返ってくる。


『はい。……もしもし? 優児?』

「礼、ごめん。寝てた?」

『ううん、今、ベッドに入ったところ。優児こそ、今週末はトレセンの合宿って聞いてたけど?』

「そう。今ね、横浜。──宿舎が、四人部屋じゃなく二人部屋で、超想定外」

『………………それって?』

「うん。同じ部屋に、マコが寝てるんだ。うちから選ばれたのは三人だけど、ミッドフィルダー同士だから、同室にされたみたい」

『──眠れないの?』


問いに、赤間はおもわず笑いをこぼした。


「眠れるわけないよ。すぐそばに、マコが寝てるんだよ?」


身体中を、濁流のように熱いものが駆けめぐっている。

携帯電話を持つ手が震えた。


「眠ろうと、したんだよ。ベッドに入らないと、マコに変におもわれるだろ、だから」

『うん』

「息を殺して、じっと、抑えてたけど……」


ちら、と視線をやれば、暗がりだというのに、ふとんから出た江野の首筋と輪郭が、はっきりと見えた。

ぴたりと閉じられた、くちびる。

いつか、自分がくちびるを重ねたそれが、無防備にさらされていて。


「気が、狂いそうだった──!」

『……触れたかった?』

「触れたい! 触れたくて、触れたくて、触れたくて……血が逆流してくみたいだった」

『でも、触れられないのね?』

「触れられないよ。そんなこと、おそろしくてできない! 指一本でも触れたら、きっとマコに気づかれる……!」

『マコのことが好きだって?』

「マコに、──欲情してるって。好きなんて、きれいなことばじゃ誤魔化せない。皮膚を指で辿るのさえ、マコを犯すのとおんなじだよ。寝息を聞いているのでさえ、マコを凌辱してるのと変わらない──」


一方的に相手に欲情しているというのは、そういうことだ。

それは、友人としてそばにいる相手への裏切りだ。

裏切りだと、おもわれる。

そのそしりに、言い逃れることばなど、あるはずがない。


『今、どこにいるの?』

「バスルーム。鍵かけてこもってるけど、閉じこめてもらうんでなきゃ、意味がない。出ていく気になれば、いつでも出られる」

『大丈夫。優児は、出ていかないよ』

「大丈夫じゃない。苦しくて、苦しくて、仕方ない」

『大丈夫だよ』

「マコを、抱きに行きたい。爆発しそうだ。さっきから、すごく、痛い──」

『服から、出してあげて』

「ダメだよ。できない。そんなことしたら……」

『大丈夫。優児。大丈夫だから。自分で、慰めてあげて』

「そんなこと──!」

『マコに気づかれる? 平気よ。平気。そんなふうに、自分を追い詰めないで。楽にして、下着から出してあげて』

「……できない!」

『優児』

「だって、眠っているときが、いちばん人間は意識的なんだ。俺がこんなに近くで、こんなにマコを犯したいとおもっていたら、マコにもぜったいに伝わる。マコの頭には、俺の頭の中のすべてが筒抜けになっちゃうんだよ」


三秒ほど、沈黙が返ってくる。


『そうかも、しれないけれど。それでも、優児は明日の朝になれば、きっとマコに、何でもない顔をして笑えるでしょう? 俺に犯される夢を見たの、それって願望じゃない、っていつもみたいにいじわる言って、はぐらかしてしまえるから』


何を言われたのか理解したとたん、笑いがこぼれた。



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