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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
3:三角関係/中3
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キャプテンと副キャプテン

十秒とせずに、背中に誰かの足音が近づいてくる。


「聞いてたの、マコ?」

「いや。礼は俺がいるのに気づいてたけど、来るなって、言われてる気がして」

「変なの。マコに聞かれて困る話なんかしてないよ?」

「あいつ……」

「マコが、仲間じゃなくなっても友だちだって言ってくれたって、喜んでたよ」

「……あいつは、おまえのことが好きだったのか?」


赤間は、おもわず背後に向き直った。


「──さあ。そうだとしても、マコには関係ないことじゃない?」

「それは、そうだけど……」

「それとも、男でも女でもいいなら、礼とつき合ってやれ、とか言おうとしてる?」

「っ…………」


気まずそうに息を飲んだ江野が、うつむく。


「俺はねえ、マコ。真剣なきもちに応えられるような誠実さなんて持ってないんだよ、誰かさんとはちがってね」

「礼のこと、嫌いじゃないんだろ?」

「嫌いじゃないから、何なの? マコにとっては人助けも愛の一種なのかもしれないけど、俺は好きな相手以外と、とくべつな関係になる気はないよ。まあ、セックスだけしてやれっていうなら、それはもちろんできるけどね。心も誠意もなくていいなら、俺でもできる」


とたんに、江野が赤間の肩を突いてくる。

怒った顔……

赤間は、おもわず笑った。


「何で怒ってるの。わかってて、俺に、キスの相手をさせたんじゃないの? それとも、俺がキスをしたのは、マコをとくべつに想ってるからだとでもおもってた?」

「──黙れ」

「マコはほんとうに俺がわかってないね。大丈夫。礼は、ちゃんと俺がどんなやつかくらい、わかってるから」

「おまえ……!」

「んー?」

「おまえのことなんか、わかるわけがないだろう! さっぱりわからないし、──わかりたくもない!」


もういちど、赤間は笑った。


「そう? でも、もうあと三年、俺たちはチームメイトだからね。これからもよろしく、期待してるからね、キャプテン?」

「ふざけるな。次は、おまえがやれ!」

「やるわけないよ、キャプテンなんて。チームが勝とうが負けようがどうでもいい人間に、そっちこそ任せられるの?」


ぎり、と江野が奥歯を噛む。

江野がキャプテン、自分が副キャプテンというのは、良かった。

どんなに江野が不満そうな顔をしても、せっせと横から助けてやることができた。

あんなに楽しいことはない。

そこまでできるのならおまえがキャプテンをやれ、と江野が毎日のように心で叫んでいたことを知っている。

それでも、赤間が助けてやりたいのは、江野だけなのだ。

他のチームメイトが困ってようが、孤立してようが、赤間はつゆほども構わない。

江野以外は、心底、どうだっていいとおもう。

江野以外のよろこびなど、赤間の胸には少しも響きはしないのだ。

あっても、なくても、おなじもの。

なぜああも、他人事にばかりかかずらうことができるのか、赤間には、江野の方がよっぽどふしぎでならない。

わかりたくても、赤間にはさっぱりわからないのだ。

わかりたくもない、というのが嘘だとはおもわないが、江野にわからないのも、無理はない。

わかろうとしたところで、江野にもわかりっこないのだ。

そういう、永遠に相容れない関係にあるのだ、きっと。

赤間にわかることはただひとつ。

それは、江野は、赤間がぜったいにしない選択をしつづけるのだということ。

そしてまた、赤間の選択も、江野がぜったいにしないものなのだろう。

残酷なまでに、すれちがうふたり──

それこそが、らせんを描くもの同士の、抗えない宿命なのに、ちがいなかった。



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