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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
3:三角関係/中3
13/60

懇願

「そんなに、意外?」

「だ、────だって」

「礼は苦しんでた。他のやつらが女の子の話なんかを楽しそうにしてるとき、すこしでも不自然な反応をして、自分の性癖を知られちゃったらどうおもわれるだろう、って」

「お、まえは……?」

「男が好きだろうが、女が好きだろうが、そんなのどうだっていいよ。礼が、女の格好をして生きたいっていうなら、べつにそれでいいとおもうけど」

「だけど」

「俺は、そうおもう。だから、悩んでる礼を抱きしめた。キスもした。口紅や髪飾りも買って、プレゼントしたよ。マコたちにはできなくても、俺にはできる。あいつ、化粧すると、そこらの女の子よりよっぽどきれいだよ。きれいだって褒めてあげるくらい、かんたんなことじゃない」

「………………」


江野は、何だか絶望的な顔でうつむいてしまった。

まだ、赤間の腕にかけた手は離さない。

離せないのかもしれなかった。


「いっしょにサッカーをやって、裸の付き合いってやつをして、それがマコの言う仲間なの? そうできないやつは、仲間じゃない?」

「──黙ってくれ」

「そんな顔をされるってわかってたから、礼は言わなかったんだよ。マコに、誤解されたままで離れる方が、まだマシだとおもったんだとおもう」

「優児……!」


江野が、赤間の両腕をにぎった。

痛いくらいに。

つむじが見える。

うつむいて、どんな感情を抑え込もうとしているのだろうか。


「裏切られたなんて、おもわないであげなよ。人には、それぞれ自然な生き方ってものがある。サッカーより大事なものだって、あるんだよ」

「──わかってる」

「礼は、マコのこと、信頼してたよ。仲間だって言われるのが、うれしかったんだよ。だから中学の終わりまで、自分を偽りながら耐えたんだ」

「──わかってる!」

「ほんとうは、自分から正直に告げて、受け入れて欲しかったに決まってるよ」

「わか、……かってるっ」

「マコが、自分を責めることないんだよ。正直言うとね、礼と、マコは頭が固いから、ぜーったい言うまで気づきっこないな、って笑ってたんだ。さっきのあっけに取られてるマコの顔、礼に見せてあげたかったな。やっぱり、ってきっと笑ったとおもうよ」

「…………優児」

「うん?」


返事をしたら、ひどく思い詰めたまなざしが、赤間を見た。

ぎくり、とする。


「──頼みが、ある」


背筋を、冷たい汗が伝い落ちる。

江野の言いたいことは、わかる気がした。

でも、それでも、赤間はうなずきを返す、ほほみを浮かべて。


「マコの頼みなら、何だって叶えてあげる」

「俺、に……」


キスしてくれ、と耳に届くぎりぎりの声が、乞うた。

苦い想いが、胸に湧く。


「マコ。それは、自分への罰なの?」

「ちがう……!」

「そんなことをしたって、礼はよろこばないよ」

「わかってるっ!」

「そうしたら口にできるかもしれないことばならね、そんなことをしなくたって、ちゃんと口にできるから」

「……優児!」


赤間は、懇願の声に息を止めた。



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