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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
3:三角関係/中3
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同期の仲間

「優児──」


めずらしく、怒っている、以外の顔で寄ってきた江野を、赤間は見返した。


「どうしたの? 悩み事?」

「……礼が、クラブをやめるって言ってる」

「そうだね。それが?」


みるみる、江野の目が大きくなる。


「……それが?」

「チームのエースがいなくなる、って心配してるの?」

「そんなことじゃない!」

「始めたのは礼の意思で、やめるのも礼の意思だよ。それでいいじゃない」

「いいわけないだろっ!」


赤間はぽり、と頭を掻いた。

心の底から、いいわけない、とおもっている人間を説得するのはやっかいだ。


「引き留めたいなら、礼と話したらいいんじゃない?」

「────」

「そうか、泣かれちゃったか」


くしゃくしゃと、赤間は髪を掻き回す。

江野は心底渋い顔をしていた。

赤間は動作で、隣に座るよう江野を促す。

江野はめずらしく、おとなしく赤間の誘いに従った。


「もう、限界なんだとおもうよ。好きにさせてあげなよ」

「理由もわからないのにか」

「理由がわかれば、好きにさせてあげられるの?」

「それは──」

「それはマコの自己満足だよ。仲間だっておもうなら、聞かずに、好きにさせてあげたらいいじゃない」

「………………あいつは、俺たちを、仲間だとはおもってないのか──?」


重い問いに、赤間はため息をついた。


「仲間だから言いだせないことっていうのもあるんじゃない?」

「おまえは気にならないのか」

「俺は知ってるもの」

「──なに?」

「気づいてたよ。とっくに。礼に言わせるまでもない。だから、好きにしたらいいよって言ったけど。それが?」


膝に置いた江野のふたつのこぶしが、ぶるぶると震えている。

仲間が、何よりも大事な男なのだ。

そんな江野がどんなきもちでいるか、わからないわけがない。


「礼は、必死で隠してた。気づけないのは、無理ないよ。知らないでいてあげた方が、いいんじゃない?」


そう言った赤間を、江野が振り向く。

赤間は、内心、嘆息した。

江野にそんな目をされるのは、心がうずく。


「そりゃ、マコが聞きたいなら、俺は言うよ。聞いても、マコが礼を仲間だって言えるならね。言えないなら、聞かないまま、別れてあげなよ」


江野の手が、赤間の腕に触れる。

衣服越しにだ。

それでも、ドクッ、と心臓が跳ねた。


「教えてくれ、優児──」

「……礼はね。もう、男の中で、男として、生きたくないんだよ」

「は──?」

「女として生きたいんだ、って言えばわかる?」


とたん、江野がぽっかりと口を開けた。

あぜん、を絵に描いた顔だ。

腕にのった江野の手に、力が加わる。

離して欲しいというきもちと、もっときつくにぎって欲しいきもちが、胸の中で混ざり合う。



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