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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
2:先輩・神前直澄/中1
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通常能力

「なあ。マコには理解できんの、こいつの言ってること?」

「できるはずないでしょう。お経か何かだとおもっておけばいいんですよ」

「お経……?」

「あー、そうだね。お経と似たようなものかもしれない。方向性はたしかにいっしょ」


おもわず赤間は笑った。

神前が、江野と顔を見合わせている。


「ところで、マコにひとつ訊いておきたいんだけど」

「──ノーコメント」

「マコには、夢精の経験があるかどうかなんて訊かないから、大丈夫。……ただ、マコの好きなタイプってどんなだろうって」

「そんなこと、どうだっていいだろ」

「うーん。でも、将来、マコと好きな相手が被ったりすると困るからさ。かわいい子が好き? スタイル重視? それとも、美人系?」


江野は答えず、沈黙を貫いている。

赤間はゆっくりとうなずいた。


「なるほど、美人がいいのか。まあ、マコが心惹かれる相手って、そうだろうね」

「えっ! 今マコ、何にも答えてないよ? ないよな?」

「顔見てればわかるよ。俺を誰だとおもってるの、直くん。だから、サッカー始めて二年で、ここに入れたんじゃない」

「……マジか。超能力者?」

「何言ってんの。通常能力だよ。他の人間が、ほんとの能力の九五パーセント以上使わずにいるままなんだって。俺は一〇パーセントくらいは使ってるかもしれないけど、残りの九〇パーセントまで使おうなんておもわない。そこまで本気になるともう、こんなくだらない常識がはびこった世界、ぜんぶぶっ壊さずにはいられなくなるだろうから」


こちらを見た江野に、にっこりと笑いかける。

たちまち、江野が不審そうな顔をした。


「でも、もし、マコがつき合ってくれるのなら、どこまでできるか、いっそ本気になってみるのもいいかなーっておもうよ」

「つ! つき合うって、こここ、恋人として?」

「アホなの、直くん。マコも俺も男だよ。見てわからない?」

「────わか、る。わかるけど。……って、わかるに決まってんだろ。クソっ、優児めー」


ぶつぶつと言う神前を見て、赤間は笑った。

江野は、見るべきトップチームの試合に、視線を戻している。

その表情にあるのは、頑にもおもえる、赤間に対する明確なノーだった。

でも、もしも彼が、一〇パーセントのその先へ、つき合ってくれるのなら──

赤間は本気で、一〇〇パーセント全開で生きてみてもいいかも、とおもっているのだ。

そう、江野さえ、つき合ってくれるのならば…………

どこまでも、どこまでも、江野といっしょならば、行ってみても構わない。

──けれど。

そんな衝動、いや、焦燥を、赤間はいつだって、ないもののように心の奥に押し返してしまうのだった。



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