魔王vs???
魔王:よく来たな勇者よ、そしてその仲間たちよ。
勇者:おう!来てやったぜ!
そしてあんた、毎回毎回律儀にその挨拶すんだな。
魔王:我、魔王なり。故にこの口上は欠かせぬ。
僧侶:そう言えば以前魔王協同組合から
その口調も含めて指示が出ていると仰ってましたね。
魔王:うむ。であるからにいざ尋常に勝負だ。
かかってまいれよ、勇者よ、そしてその仲間たちよ。
勇者:いや、ちょっとだけ待ってくれ。
魔王城ってすっごい北にあるから寒いだろ?
そんな中で頑張ってる魔王にプレゼントを持ってきたぜ!
魔王:うむ?確かに毎度手ぶらで訪ねてくるのは
いかがなるものかとは思っていたが。
勇者:あ、ああ、ほら、そんな固いこと言うなよ!
そんなのチャラにするくらい良いの持ってきたんだからよ!
僧侶:勇者、それではまるで危ない薬でも持ってきたような…。
勇者:ちげーよ!何それ!オレどんなキャラ扱いだよ!
魔法使い:まぁまぁ。勇者よ、そう怒るでない。
僧侶も勇者の心遣いをからかうのは性格が良くないぞ。
僧侶:そう言われるのは心外ですが、まぁそうですね。
私にも非があります。申し訳ありません。
勇者:だからそーゆー堅苦しいのはいいって!
それよりじっちゃん、はやくあれ出してくれよ!
魔法使い:はいはい。年寄りの人使いが荒いのう、
今代の勇者は。
さて、十分な広さは確保できたかな。
ほれ、勇者、ささっとその床を綺麗にしなさい。
勇者:じっちゃんだって勇者使いが荒いぞ!
でも、ほら、どうよ!ちゃんと綺麗にしたぜ!
僧侶:勇者の能力の無駄使いと言うべきところか
悩みますねこれは。ねぇ、魔王もそう思いませんか?
魔王:いや、そもそも貴様らは何を
召喚しようとしておるのだ。
見たことのない陣のようだが。
さては実力の差をようやく認めて
今度は神々でも召喚することにしたのか?
勇者:おいおい。神々を召喚って
幾らオレらでもそんな無茶ぶりできねーよ!
僧侶:ある意味神をも恐れぬ
魔王らしい発想と言えばそうですね。
勇者:それよりもっとすげーもんなんだんぜ!
僧侶:今神より凄いものと…
いえ、何も聞かなかったことに…。
魔法使い:ほっほ。まだまだ若いですな。
さて、それでは準備が整いましたぞ。
勇者よ、召喚を。
勇者:おうよ!準備ありがとな!
行くぜっ!!
その優しさは甘美なる誘惑
そのぬくもりは春の陽だまりの如く
汝は全てを久しく無に帰すもの
(魔王:なんだその物騒なものは。)
(僧侶:まぁまぁ。)
勇者:我の力に応じて今その姿を具現せよ!!
いでよ!!
こたつ!!
*こたつ召喚*
魔王:…
魔法使い:無事召喚できたようですな。
流石勇者、異界のモノを引き寄せる力を有するとは。
僧侶:ええ、勇者としての能力だけは
長けていますからね。
それにしてもいつにましても立派なこたつです。
魔王:・・・???
勇者:よっしゃ!これなら全員で入れるぜ!
みかんまで完備だ!
ほら、入ろうぜ!
ぬっくぬくだー
魔法使い:おお、本当に全ての物事が
どうでもよくなりますな、この甘美なる誘惑。
僧侶:だらけることは許しがたいのですが
この誘惑だけには…ああ、やさしいぬくもりです。
魔王:・・・貴様ら・・・何をしておる?
勇者:ははっ!気にするな!
とりあえず入れはいれ!
魔王:入る、とは…。
魔法使い:ほれ、こちら側が空いてますぞ。
僧侶:どうせ勇者と魔王は敵対する立場。
罠だと思って入ってみてはどうですか。
勇者:あははっ!
実際罠だよな、こたつは!
魔王:…
む。
な、なんだこの優しきぬくもり。
勇者:おうおう、いつもこのくそさみぃ
北の魔王城で頑張ってんだもんな!
おつかれさん!こたつでいやされてくれ!
魔王:こ、これは…力が抜けて行く…。
貴様何をした…
いや、なんか結構どうでもいいかもしれない。
魔法使い:ほっほ。それがこたつの魔力ですなぁ。
僧侶:それより今なんか口調が砕けませんでした?
魔王:え、何言っちゃってんの。
あんな我とかよくぞきたなとかが
素なやつなんてそもそもいるわけねーだろ。
勇者:だよなぁ!魔王も苦労してんだよなぁ!
僧侶:…まるで勇者が二人になったようですね…。
まぁ、ぬくいので良しとしましょう。
魔法使い:細かいことは気にしてはならんからのう。
勇者:ほら、魔王!みかん食え、みかん!
魔王:なんだこのちっせーの?
お?おお!?うめーじゃねえか!!
おい、てめーらいつもこんな贅沢してんのか!?
くっそ、やっぱ魔王じゃなくて
勇者になってりゃ良かったぜ。
僧侶:何か不穏な空耳が…。
魔法使い:ほっほ。幻聴、幻聴。
勇者:魔王!お前とは前以上に仲良くなれそうだ!
いつでも遊びにきてやっからな!
このこたつはオチカヅキの印ってやつだ!
僧侶:あほ勇者が二人に…。
魔法使い:平和で何より、何より。ほっほ。
「魔王vsコタツ」