ねぇ千恵子、あんただったら自分のパンツ、一体いくらで売れる? その2
「ちなみに、どうして百万円で売れると思ったんだ?」
「え?」
どうしてって…。まさか口が滑ったなんて言えない。多分、なんとなく高額で、テキトーにキリのいい数字だったからだ。でも、確かになんでそんな高値で売れると思ったんだろうか。
「えっと…やっぱり、私たちが、女子高生だから?」
「だよな!」
鈴原さんが急に大きな声を出すからビックリしてしまった。ほとんど椅子から立ち上がりかけている。
「確かにアンタの言う通り、女子高生のパンツってだけで、結構高額で売れそうな気はするんだよな。なんか知らねぇけど、そういうのおっさんとかに受けそうじゃん。女子高生モデルとか、女子高生アーティストとか、小説家とか漫画家とか。その中で女子高生のパンツってのは、連中にとってかなり貴重なもんに違いないからな」
確かに女子高生というだけで何かにつけて特別視される。いわゆる「女子高生ブランド」というやつだ。女子高生が何かしているというだけで、マスコミはこぞって話題にしたがる。大抵は素人に毛が生えたような連中ばかりなのに。
「まぁでも、それにしたって、百万はちょっと高過ぎるかな。サラリーマンのおっさんじゃあとてもじゃないが手は出せねぇよ」
だからそれは口が滑っただけなんだって。言えないけど。でもちょっと気になることがある。
「でも実際、その…女子高生のパンツって証明するのって、かなり難しくないかな?例えばネット販売でそういうのよくある気がするけど、実際のところ本当かどうかなんて買う人には分かんないよね」
「実際はおっさんが履いてるかもしれないしな」
それはより考えたくない。だが事実、嘘と出鱈目と誤魔化しばかりが流布するネット販売では、その可能性もありうると言わざるを得ない。
「うーんでも確かになぁ。折角本物の女子高生が売ってるのに、それを見逃しちゃうヤツもいそうだな。どうしたら本物の女子高生のパンツって証明出来るかな?」
「…生徒手帳の画像をつけとくとか?」
「いや、個人情報をネットに出すのはしたくない。っていうか画像貼ったくらいじゃ、信憑性変わんないだろ」
「確かにそうだねぇ…うーん思ったより難しいね」
「あ」
「何か思いついた?」
「その場で脱いで、渡せばいい」
「ぽわぁっつ!?」
その場で、脱いで、渡す?そ、そんな恥ずかしいこと出来るわけがない。鈴原さん、思考が大胆過ぎる。
「そ、そんなの無理だって!絶対無理!っていうか、その場で脱いでそのあとはどうするの!?ノーパンで帰るの!?」
「んなもん代わりのパンツをあらかじめ持ってっときゃいいだけだろ。確かに恥ずかしいけど、これ以外に確実な方法、ないと思うぞ」
た、確かにそうだけど…。いくらなんでもリスキー過ぎる。買う人がどんな人か分からないのだ。そもそも女子高生のパンツを求めてる時点でだいぶヤバイ感じがするし、そいつの目の前で事もあろうにパンツを脱がなければならないのだ。恥ずかし過ぎるし、危な過ぎる。やっぱり、百万で適性価格かも。
「…でもそれを考えると、百万でも良いんじゃない?」
「うーんそうだなぁ。確かに、その羞恥プレイ込みの価格と考えるなら、もうちょっと吊り上げても良いのかもな。あ、でもやっぱり百万はたけーよ。なんかもう、額面見た瞬間無理って思うもん。「コレなら俺でも手が出そう!」っていうギリギリの価格を知りたいんだよ、アタシは」
なるほど。確かに、折角売るなら出来るだけ高値で売りたい。でも売れなかったら意味がない。世の中には山のように商品があって、それら全てに何らかの価格がついているけど、値段を決めるのって難しいんだなぁ。全国、いや全世界の社長の皆さんは、どうやって価格を決めているのかな。なんか秘密の方程式でもあるのかしら。
「うーんたかが普通の女子高生である私らじゃ、大人のひとと金銭感覚も結構違うだろうし、なかなか決めらんないよね」
「んなことねぇと思うけどな」
「え?」
「確かにアタシらは普通の女子高生で、基本的には親に扶養してもらってる身だけどよ。でもそのアタシらだって、立派な社会の一員だろ。ちゃんと自分の意思でお菓子も買うし、服も買うし、マックにも入るし、カラオケにだって行く。歴とした経済活動をしている。だったらアタシらはアタシらなりに考えれば、ちゃんと商品として売れる値段を見つけられるはずだよ」
正直鈴原さんの口から「扶養」なんていう言葉が飛び出してくるとは思わなかった。でも確かに、鈴原さんの言う通りだ。まだ子供だから、女子高生だからって、何も出来ないわけじゃない。もう法律的には結婚も出来る、立派な大人なんだ。きちんと考えていかないと。
でも、その情熱をパンツに向けるってのが、やっぱり理解に苦しむけど。鈴原さん、頭いいのか悪いのかよく分かんないなあ、全く。