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スカウトマン

作者: 安眠マン

〜ある男の話である。〜


俺はスカウトマンだ。

とびきりの金の卵を発掘すべく、日々町を徘徊している。

あまりに女の顔をじろじろ眺め回すので、よく警察官に声をかけられる。

しかし安心してほしい。

俺は立派なスカウトマンだ。

もし町で貴方の顔を舐め回す様に見てくる人物がいるならばおおよそはスカウトマンだと見て間違いない。

さもなければ完全なる変態である。

直ちに110番を押して通報しやがれ。

警察官が貴方を守ってくれる。

しかし、もしそれがスカウトマンであれば貴方は非常に惜しいことをした事になる。

もっとも芸能に興味がなければ別であるが。



話が逸れてしまったので元に戻そう。

俺はその辺に転がっているスカウトマンとはワケが違う。

この仕事に誰よりも情熱を注いでいるからだ。

あいつらの様に手当たり次第に声をかけるなんて事は絶対にしない。

そんな事をしても、売れる人材など輩出できる訳がないのが明白だからだ。

俺は自分の直感を大事にする。

脳みそに電撃が走る様な女以外に興味はない。

お茶の間で通用する人物はそういう人間でならなくてはならないのだ。

この様に拘りが強い為か今までめぼしい人材に巡り会えたことは無い。

しかし必ずや金の卵を発見できる日が来ると信じている。





そして今日も俺は街へ出かけた。

スポットは駅の改札口だ。

ここは学校へ通学する女子高生から会社勤めのOLまで、ピチピチの女がわんさか集っている。

スカウトするならばもってこいの場所だ。



改札口から溢れ出す女に、俺は意識を集中させた。



ほら見ろ、あの女、なかなか良い線いってるぞ。

しかし鼻がいまいちだなぁ、それにスタイルも良くない。

残念ながら不採用とさせていただきます。




おぉ、次の女の子もかなりの代物だぞ。

今でこそパッとしないが、将来化ける可能性が濃厚だ。ちょっと待て、足が大根じゃないか。これはいかん。

残念ながら不採用とさせていただきます。



俺はあまりに熱心に女を選別していた為、警察官に取り囲まれている事に全く気づかなかった。



どうやら駅員が俺のことを不審に思って連絡したようだ。

まあしかしこういう事には慣れっこである。

適当に説明すれば直ぐに帰るのだ。




「あの〜、私スカウトの仕事をしておりまして、決して不審な者ではございません」

俺は警察官共にニッコリした笑顔で言ってやった。


しかし、何やら警察官は神妙そうな顔つきでひそひそと仲間同士で話している。

「こいつか、昨日刑務所から脱走した奴は。」

「はい、間違いありません。精神が錯乱しており、自分がスカウトマンであると信じ込んでいます。」

「確か、前に捕まった時もスカウトマンを自称して若い女を殺害したな」

「はい、記憶も曖昧なようで過去の出来事は自分の脳内で作り上げているようです」

「よし、即刻取り押さえろ!!」



俺は訳が分からなかった。

俺は確かにスカウトマンである。

女を殺した?

嘘を言え、俺はまだ女に声をかけたことすらない。

記憶を偽る?

俺は昨日食べた晩飯でさえ鮮明に覚えているんだぞ。馬鹿を言うな。



俺は最初酷い悪夢でも見てるのかと思った。

しかしどうやら現実のようだ。

警察官に腕を取り押さえられる時、猛烈な痛みを感じたからだ。



俺は手錠をはめられ、大勢の人々が見つめる中パトカーへと連れられた。



















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