表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

はじまりは見合いでも

作者: 但馬ほずみ

さくっとお読みください

 私とだんな様との出会いは、見合いでした。とはいっても、お断りなんて出来ない結婚が決まっているほとんど顔合わせだっだのですけれど。

 まあ、ありていに言えば政略結婚ですわ。よくある話です。この頃増えているという恋愛結婚にも、憧れなかったとは言いませんが、貴族の結婚なんてこんなものでしょう。


 硬い表情のだんな様と、引きつり気味の笑顔の私。「お似合い」だなんて、仲人の方もよく言うわと思ったものでした。


 だんな様は、国内最有力の公爵家の跡取りでいらっしゃって、結婚相手を選ぶのに条件が厳しかったのです。

 他の上位貴族との婚姻は、勢力が大きくなりすぎる為にまずい。かといって王家につりあう年齢の女性がいない。まさか、3歳の王女の成長を待つのも…。と、一族で頭を悩ましていたところに、私の情報が入ってきたのだそうです。


 私、顔も身体も頭も超平凡ですし、家もごく普通の伯爵家です。美形の部類に属し次期宰相の呼び声も高いだんな様とつりあう様には思えません。では、なぜというと、我が家が血筋だけは王家とはれるほどに古いから、らしいんですよね。

 10代前には王女の降嫁もあったし、いいんじゃないかということで、即求婚。地味~な伯爵家の我が家がお断りできるはずもなく、結婚に至りました。10代前って…。


 だんな様は、婚約以後、しきたり通り、いえ、それ以上に花やプレゼントを贈って下さいました。お出かけにも誘っていただき、パーティーのエスコートも完璧です。その表情は硬いですが、政略結婚だから、こんなものだろうと思って気にしませんでした。

 さすが次期宰相、政略結婚とはいえ、婚約者持ちの紳士のかがみね~と感心していたら、ちゃんと感謝してるんだろうなと、あきれた様子の兄にしかられました。

 してます!と答えましたが、よく考えると言葉だけだったので、次の機会に飛びっきりの笑顔もつけてみました。そうしたら、硬い表情がゆるみ、ご機嫌が良くなったのです。笑顔一つでご機嫌が良くなるならと、毎回笑顔を返していたら、だんな様の表情もどんどん柔らかくなりました。これなら、穏やかな結婚生活も送れそうだなぁとほっとしたのもこの頃のこと。


 結婚式の日は、だんな様が満面の笑みだったので、私も思わず張り合ってしまい、一世一代と思えるいい笑顔を終始絶やしませんでした。

 そのせいか、私たち夫婦は、相思相愛の夫婦だという噂があっという間に広まったのです。政略結婚なのにねぇ。


 無事に結婚式を済まし、侯爵家に移って3ヶ月。ようやく次期公爵夫人としての生活に慣れてきました。だんな様のお母様、現公爵夫人のもとでのお勉強が主ですが、やるべきことは山盛りです。あ、ちゃんと自分の時間もありますよ。無理はしないようにと、皆さんに気を配っていただいています。


 今日は久々に、お友達がお茶会に来てくださいましたの。もちろん話に花が咲きましたわ。主に私の新婚生活についてでしたけれど、何人かの方の婚約も話題にのぼりました。

その中で、お相手の方が問題ありという方がいて…。


 何人もの愛人のいると有名な方の名を告げられて固まってしまった私たちに、彼女は形だけの結婚だと笑ったのです。

 彼女の笑顔に、それからもお茶会は続けられました。


 皆さんがお帰りになって一人になると、ため息がこぼれます。

 お疲れですかと尋ねる侍女に、首を振りました。お友達の婚約のことだと答えれば、その場に控えていた侍女もうなずきます。


 彼女は強い人だから、きっと前をむいて自分の道を歩むのでしょうが、ああいうお話を聞くと、私は自分がどれだけ恵まれているかとあらためて気付くのです。

 公爵家に優しく迎え入れてもらい、だんな様は政略結婚だというのに、これ以上無いほど気を配ってくださる。そう言うと侍女も手を組んで、大きく頷きながら同意します。侍女から見ても、そう見えるのよね。


 だから、だんな様が愛人を作られた際には、私笑って受け入れようと思うの。


 私が、そう宣言すると、侍女の様子がおかしくなりました。あわてたように視線が私の顔とその後ろを行ったりきたりしています。なんだろうと後ろを振り返ると、そこには引きつった顔のだんな様が。


 あら?だんな様、もしかして怒っておられますの?な、何が原因かしら?

 あ、侍女がそそくさと退室してしまいましたわ。こんな状態のだんな様と二人にしないで~!



 それから、だんな様にみっちりご説明を受けました。

 お見合い前に、私のお友達(だんな様の従兄の妻)に、私のことを聞いていて、遠くから姿も見た事があったそうです。で、縁談を申し込んだとか。

 見合いの日の硬い表情は、緊張してたから。プレゼントもエスコートも一生懸命心をこめていたんだけど、私が型どおりのお礼しか言わなかったから、嫌われてるのかもと、硬い表情のまま。笑顔でご機嫌が良くなったのは、私が心を開いてくれたと思ったんだそうです。知りませんでした…。私、愛されていたんですのねぇ。


 結婚式の満面の笑みは、思いが通じ合ったうれしさのあまりでしたか。演技ではなかったのですねぇ。あうう、張り合ってただなんて言えませんわ。


 最後に、愛人なんか作るつもりはありませんと、断言されました。それはもう、きっぱりと。


 それから、だんな様は、プレゼントもエスコートもそれまで以上になりました。しかも、愛の言葉付き。最初は戸惑いましたが、今では私もだんな様のことを愛しています。

 もちろん、愛人なんて影も形もありません。


 出会いは見合いでしたが、今は正真正銘の相思相愛です。これは結婚恋愛だと思うのですけど、いかがかしら?

 

 

だんな様サイドの話…、ヘタレになりそうだな~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ