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あれは何者なのか謎が落ちていく

2014/09/01 投稿

 ただ呆然と立ち尽くしていた。いや今更に気づいてしまったこと、知らなければ良かっただろう。見つめる先にある英名はアリス・カイテラー。しかしこれは読み方が間違っている可能性がある。この綺麗な筆記体を見て既視感を覚えた。それはこの英名がアリス・キテラと読めるからだ。

「これ、本物なんだよな」

 誰に聞いたわけでもない。最初のページに戻り、ゆっくりと読み進める。驚くことに家にある本と同じような魔法であるが、ここ書いてあるの魔法はどれも知っているものより効力が薄い。確かこの魔法はなど思い、ハッとして別の本を見直す。

「どうしてあるんだ」

 しばらく考えて自分の間違いに気づいた。

「いや、逆だ。どうしてこの本の魔法にはないんだ」

 完全に見落としていた。魔法の詳細ばかりに目を取られ、違和感を感じたことにさえ気がつかなかった。棚に並んでいる数十冊のいくつかの魔法を確認する。やっぱり思った通りだ。魔法に名前が無いのは、アリスの本だけだ。

「ちょっといいか」

 誰に聞こうかと思い、愛崎に聞くことにした。

「どしたの祐希」

「魔法を使わせないように、魔法で細工できるか?」

 うーん。唸った末に知らないという。聞けば、可能かも知れないが試したこともないし、そういう効力を持った魔法も知らないとのことだ。

「そういうことなら、私より和佳に聞いて」

「風里さんにか?」

「和佳と涼子は家が魔法使いの家系でね。生まれた時から魔法の素質がある。私や祐希みたいな雑草とは違うんだよ」

 両親もしくは親のどちらかが魔法使いであれば、その性質は遺伝のように受け継がれるということだろうか。

「私よりも知識と技術と才能の全てで、礼音(あやね)の方が上回ってるのに。よく、そんなことが言えますね」

「でも風里さん。さっきの俺の疑問に答えられるんだろう?」

「それはそうですが。私の知る範囲では、魔法の名前を知っていれば、いくつか対策できます」

「魔法の名前が必要なのか?」

「あくまで私の知る範囲での話です。礼音の言うように、可能かも知れませんが。無条件で魔法使用を封じ込めるものは、聞いたことがありません」

「そうか……ありがとう」

 再び本棚の近くに戻り、あの本に目を通す。やっぱりそういうことなのだ。アリス・キテラという魔法使いはあえて魔法に名前を付けなかった。まぁわかったところで、何なんだって言うことなんだが。

 しかし決定的にわかったことがある。詳しくは知らないが、魔法使いの家柄を持つやつが知らないと言うんだ。名前を付けなかったということ、これに意味がないわけがない。適当な本を開いて見比べてみるが、名前表記の有無以外には俺に見つけられない。

「そういえば、この文字列ってそもそもなんだ」

 文字であるかさえも不明だが、どの魔法にもある。これもいくらか見比べてみたが、似た系統の魔法であっても規則性がない。それぞれに似た形はあるが、その法則性については不明だ。あぁーわかんね。

「ねぇ祐希。なに唸ってるの?」

 気づくと、愛崎が近くに居た。

「あまりにも基礎的な知識がないことを、ジワジワと痛感してるところだ」

「誰かに聞くってことは考えないの?」

「まずは自分で考えるのが先だろ」

 きっぱりと宣言して、開きっぱなしのページに目を落とす。

「必要な情報が足りないこと。あるんじゃない?」

 確かにと、そう思う。ただ、楽して手に入れた情報に価値を見い出せる自信がないだけ、ただそれだけの自己満足のために、ある程度は自分で解決したい。

「それも足りないと気づかないといけないだろ」

「ま、確かに」

 愛崎は座っていた椅子に戻り、その後は邪魔と入ると言っては悪いが、まぁそれが入ることなく思考を巡らせることに没頭したのだった。

まだ始まったばかりですが、気に入っていただけると嬉しいです。

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