情報はゲーム進行に必須だった
2012/08/30 投稿
世界には不思議が存在する。不思議は普通に考えれば、ただ意味不明なことである。俺が遭遇した不思議は二つ。魔法そして第二生徒会。
第二生徒会の部長である愛崎礼音によると、第二生徒会は一般的に言うボランティア部とか奉仕部のようなものだ。ただし校内限定であるが。
「つまり学校の便利屋ってことだ」
「簡単に言えばそうだね。で、あっちの生徒会が出来てない生徒のケアは、私たちがやるってこと」
「そのあっちは、本来の生徒会ってことだな……第一生徒会って言ったとこか」
この部室を見回してみると様々な道具がある。掃除用具に始まり用途不明の機械が幾つかある。どれも使っている様子はない。
「ケアするって言っても、お前ら活動してないだろ」
「え、どうして?」
「逆にどうしてバレたと思う、風里さん」
腕を組み目を閉じる風里和佳。その長くも短くもない髪を一度も動かすこともなく直立不動でしばらく考える。
「私もわからない」
愛崎礼音に二人も同調した。これくらいわからないものかと思うが、出来るだけ丁寧に説明する。
「そこの棚に並んでる機械と掃除用具。綺麗に何かで拭かれてるけど、近くに思いっきり埃が溜まってる。少なくとも数週間は同じ場所から動かしてない。さらに入口だ。生徒が相談に来たとしても、アレじゃほとんどの奴が電気の切り忘れと思って帰っちまう。あとは三人とも一年生だからだ」
「どうして一年生だってわかるの?」
「中町さん。あんたの制服が一番ほぼ新品に見えるけど、この前に来た編入生じゃないのか」
「うん。そう」
一ヶ月くらい前に編入生が来たということで他のクラスが騒いでいたが、ここにいる中町涼子がその件の生徒のようだ。他のクラスのことなので興味が生まれなかったから、どんな感じの奴なのか見に行くこともしなかった。
「同じクラスのそいつが一年生なのは、わかりきってる。リボン慣れてないよな風里さん、今日が初めてなんじゃないか。真面目そうだから注意されなかったんだろうけど、校則に違反してる。上級生で着けてる人は見たことなから一年生だってわかる」
初対面の女子にこれだけ一方的に話すのは初めてで、やっぱり緊張する。
「す、凄いね」
「何者?」
「さすが祐希、素質あるよ」
「いや何の素質だよ」
素直に驚かれると嬉しい。さすがなんて言うわりに驚きもせず、ただ一人だけ満面の笑みだが。
「あの、第二生徒会に入りませんか?」
「は?」
脈絡もなく話がその方向に飛んだことに驚いていた。同時にその言葉に違和感を感じる。文章的な意味ではない。『言葉』そのものに、だ。これは、魔法だ。ここしばらくの努力の成果だろう。魔法を使いまくっていた成果が出た。
ただ使いまくっていたわけじゃない。知識も詰め込んだ。言葉に魔法の効果を付与するタイプ。状況からすると、肯定する返事をさせるものかも知れない。まぁ無駄に演技はしないが。
「第二生徒会の活動目的。教えてくれたら考えてもいい」
「え、どうして効かないの!?」
彼女はほんとに何者なの、と付け加える。これではっきりするというものだ。
「もしかしてここは魔法使いの巣穴なのか、愛崎」
「……そうだよ。私たちは魔法使い」
改めて確認するまでもなかった。俺が心の中が嬉しさに彩られていたのは言うまでもない。
何故なら、今この時から俺のゲームはまた動き始めたのだから。
遅れちゃいましたヽ(;▽;)ノ
……日付的な意味で。