だから、またいつの日か
2014/10/27 投稿
魔法使い同時が戦うということは、本来魔法の種類や実力の差において、絶対的な有利不利が確定される。まさか学校の敷地内で決闘起こなわれているなど誰が思うだろう。しかも今は授業中なのだ。
「愛犬がやられてしまったようですが、あなたのご友人の仕業でしょう。もう私には、この身一つしかなくなってしまいました」
「そりゃ残念だな」
彼女にもう隠し玉がないことはわかっている。何故そう言えるのかと聞かれても、説明することが難しいほどに魔法というものは便利である。
「あなたには、まだ奥の手があるでしょう。いえ、そもそもあなたは、さっきから殆ど魔法を使っていない」
「あんたがヤケを起こさないタイミングを待ってたんだよ」
「なるほど、計算魔法ですか。道理で動きが読まれていると思っていました。……やはりあなたは、私の後継者に相応しい。今からでも遅くはありません。私の全てを、意思を受け継いでください」
「それは、断る」
「どうしてですか?」
「あんたのやろうとしてることは、間違ってない。俺だって出来ることなら、やりたいと思ってる。世界の因果を歪めて、もっと良い世界に変える。誰もが一度は願うだろうな」
「あなたには、その力があります」
「力があるからわかったんだよ。この全てが数字で埋め尽くされた世界を、裏側から見たからこそ。俺はこの世界を変えない」
俺には魔法を創るという力があった。今にして思ってみれば、最終的には原理原則無視で魔法を完成させた。これは世界に存在する“魔法”という概念を、裏側から見ることができたからに他ならない。こんな不条理な世界が好きだなんてことは言わない。ただ…………
「俺には、これ以上に素晴らしい世界を思いつくことができなかった」
「何の自由もなく、決められた道を進むだけの世界で、あなたは生き続けると言うのですか?」
俺は彼女のその問いに答えられない。何故なら、振り向いた先に居るであろう少女に、聞かせるわけにはいかないからだ。
魔法を使う。起動式を思い浮かべ、最後の言葉を言う。
「在りし者達よ、シジフォース」
自らの内なる力を全力で使う。形成するのは、曖昧な形をした銃のようなモノ。打ち出すのは、消滅の弾。名前は……アブエオナでいい。
「さよならだ、同類」
アリス・カイテラーは魔法を使って、抵抗しようとする。あらゆる干渉を試みる彼女を、無視して撃つ。撃つ瞬間に彼女の魔法を全て吹き飛ばし、命中した弾は彼女を存在ごと消滅させた。
「なぁ愛崎」
「あ、うん」
その様子を一目見て、何も気づいていないのだと知る。
「俺に自殺願望はない。でもな、死ななくちゃならない」
「…………」
「だから、またいつの日か」
弾を入れ替えて、銃口を自分の頭に向ける。過去の時代に悪魔となった者と契約し、悪魔と成り果てた者は祓われなくてはならない。どんなに誰もが望んでいると疑わない理想を掲げても、それが悪であるのなら裁かれなくてはならない。込めたのは断罪の弾。その罪を償うために。
口を開いた彼女の言葉を聞かずに、引き金を引いた。
本編の方は終了です。ここからちょっとだけアフターです。




