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イレギュラーの代償

2014/10/26 投稿

 見慣れたはずの部室に出現した犬。可愛らしい小型犬なら愛でるところであるが、生憎とそこに居るのは双頭の犬。神話の本で見たことのあるような姿をしており、どう見ても害悪だと判断せざるを得ない。

「お怪我ありませんか」

「あっち。良いの?」

 犬の出現と時を同じくして現れる風理和佳。異様な魔法を感じたから来たのだろうが、それにしても屋上から一瞬でどうやって移動したのか。そんなことを思いながらも、彼女に役目を果たさないのかと問う。

「所詮は茶番ですから。彼は全てを知った上で、あそこに立って、変えようとしている。彼の創る未来に、私も一役買おうと思っただけです。……二人は下がってください」

 彼女らを後ろに下げ、風理和佳は魔法を使う。神話で見るオルトロスのようなものに干渉し、後ろの居る彼女らを認識外に追いやる。自身が最も得意とする系統の魔法であり、唯一の完全な形で効力を発揮させられる魔法である。

「はぁぁぁぁぁあああ!」

 彼女の魔法は体術と掛け合わせることで、その力を存分に発揮する。一撃で人外を机を吹き飛ばして壁に叩きつける。そして、魔法をゆっくりと確実に発動させる。右の手に炎を発現させ、剣の形に変化させる。双頭の犬が起き上がり、小さな部室の中で少女と犬が対峙する。

 少女が斬りかかり双頭の首を切り落とすと、何もなかったかのように本体ごと消えてしまう。

「うぐっ」

 その代償として左腕が無くなったことを、風理和佳は後から認識する。

「動かないで」

 透かさずに中町涼子が魔法で止血する。何とか完治させようとする。

「ありがとうございます。これ以上は無理です」

「でも腕が……」

「良いんです、八千。二人を助けたというイレギュラーの代償が、腕の一本で済んだのなら、むしろ喜ぶべきです」

 もう命の心配はない。腕の痛みが消えてもいないというのに、彼女は全力で心から笑顔を浮かべる。その時になって、中町涼子は初めて知る。

 自分と腕を無くした少女を心配する彼女だけが、何も知らなかった。

少し短めですが、いつの間にかダブル進行諦めてました(^_^;)

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