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敬愛する私の友人

2014/10/23 投稿

 学校のグラウンドに対峙する二人の男女。つい先日にも同じような光景がここあった。ただ違うのは、二人が出会ったばかりということ。

「契約を果たそう」

 今から行われるのは、決して親善試合ではない。本気で互いの運命と諸々を掛けた殺し合いだ。

「一人で挑むつもりですか」

 そんな雰囲気には似つかわしくない楽しそうな笑顔で、彼女は嘲笑う。

「あんたは俺に何を求めてるんだ」

「さぁ」

 この空間上にある俺の知る全ての知識が一瞬で運用される。俺が創った魔法の中で、最高傑作であり、知り得た魔法の知識を全て注ぎ込んだ。

「おーい、そこで何やってるんだー」

 校舎の方向からこちらに向かってくる教員。確か体育科を教える男性教師だったはずだ。

「……邪魔ですね」

 視線が横目に動いた瞬間に、彼女に魔法を感じる。加速と身体強化の魔法。そして男性教師の走る音が止んだかと思えば、愛崎礼音を超えるほどの早さでアリスは彼の前に立ち塞がる。

「うるさいですよ」

 異変を察知してから動いたのでは遅かっただろうが、彼女の腕を掴んで止めることができた。

「伊藤先生。死にたくなかったら、近づかないでください」

 次の瞬間で掴んでいた手が消える。消えた本人が魔法を幾重にも使うのを感じ、目の向けた時にはバスタードソードの類いである剣を持っていた。

 物質生成ではない。確かに物体として存在しているが、その存在は非常に曖昧で、魔法で形成を阻害できるだろう。

「邪魔も居なくなりましたし、私も契約を果たそうと思います」

 美しい剣舞を繰り出す女性と若き天才魔法使いの少年の戦い。それは後の歴史に名を残した戦いとは思えないほどに、小規模で、地味で、静かだった。


 立ち入り禁止の屋上で、グラウンドを見下げる目が一つ。

「加勢は、できそうもありませんね」

 風里和佳は、彼が自らが出会った中でも、真の最強の魔法使いだと信じて疑わない。

 神崎祐希とアリス・カイテラーは、見たことのない魔法を互いに連発している。幼い頃から魔法に精通した家で育った彼女にとって、その光景は久しぶりに見るもので、無知という恐怖を思い出させてくれる。

「魔法には自信があったつもりでしたが、礼音と言い、あなたと言い。私の自信を壊すのが得意なようです」

 風里家の令嬢であり、どんな魔法もある程度は使える。それでも、あの二人の中に割り込むことはできない。たとえ介入できたとしても、少し煙が舞い上がったくらいの影響だと、自分が一番よくわかっている。その役目は別の人物にあるのだ。

 敬愛する私の友人、愛崎礼音。

ナニカしたくても、何もできない時はあります。

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