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全知の契約者

2014/10/21 投稿

「あなたが封印を壊してしまったんですね。それにしても、どうして記憶が残っているのでしょうか」

 洋風の部屋に和服の女性に、少年と少女が一人。

「誤差はありますけど、魔法で断片を繋いで、擬似的に記憶を復帰させました」

 もう私には、何を言ってるんだかわからない。

「祐希は一体、何者なの?」

「神崎祐希くんは、元はほとんどただの一般人でした。他と違ったのは、ただ魔法に対する抵抗が、恐ろしく高かったことです。あなたならわかるでしょう、礼音」

 神崎祐希は魔法というものについて、耐性がある。干渉系統魔法など、今の彼には意味を成さない。

「魔力が多いのはわかるけどね。それがどうして」

「このような優秀な素質を持った人間を、馬鹿な古い人間に潰されるわけにはいきません。彼の魔力の大半を特殊な魔法で殺していましたが、話によると先ほど壊れてしまったようです」

 私はその魔法に気づかなかった。つまりは私が探知できない魔法だったということ。それは極限られた人間しか使えない、高度な魔法であると推察できる。

「その説明も嬉しいんですけど、この魔法の止め方を教えていただけますか?」

 彼が左肩に近い首元を指で差す。

「そうですね……恐らくはあなたが止めようと、意識的に思えば止まると思いますよ」

 また私には話が見えない。祐希が魔法を常時使っている状態だったこと。この二人は詳しい説明の会話も無しに、私の解析できない魔法の一瞬で解析している。たったそれだけしか、私にはわからない。

「あ、やっと解放された」

 ゆっくり手を振りあげて伸びをする彼は、先程までの威圧感を感じさせることなく、その場に存在していた。

「大体の事情はわかりましたか、神崎祐希くん?」

「戦闘能力はおかしいと思っていましたが、愛崎はいわゆる魔法兵士だったんですか。どうりでスペックが高すぎると思っていました」

 この二人は、言葉を介さずに意思疎通が何故か出来ている。彼が言うように、私は魔法兵士と呼んでも、間違いでない存在ではある。その私が魔法を探知していないというのに、張り付いた作り笑顔の女性とただの少年は見えない会話をしている。どうなってるの……?

「あなたが望むなら、古い契約の糸を断ち切っても良いのですが。いえ、私がやらなくとも、可能ですね」

「この契約は断ち切る必要はありません。同等の対価が成り立っています」

「わかっているのですか。契約を断ち切らなくては、あなたはこれから感情や記憶を失い、全く中身のない人形に成り果てるのですよ」

「今、それをしてしまえば、俺はあなたに殺されます。風里家の望みはただ一つ、アリス・キテラ……いや、アリス・カイテラーを殺すこと」

 面倒なので、通称アリスと呼ぶことにする。アリスは彼と強引を契約した魔法を使った記録のない女性。もう何百年も前に死んでいるはず。その彼女を殺すと言う。


 少年は全てを知った。この出来すぎた物語に結末を。用意されたかのようにあった人々に未来を。あるべき場所へと導かれた事実に終止符を。

 それは、世界が歪んでいたから。少年は自らが歪めた因果の規律をあるべき姿に戻すこと、それは彼にしか出来ない“契約”だった。

次から新章に突入しますよぉ

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