名無しの少女はやっぱり謎だった
2014/08/28 投稿
人生をゲームに例えるなら、迫り来る問題という壁を策を弄して突破しなくてはならない。架空の世界なら楽しいことも現実に現れてしまえば、必ずしも楽しいということはない。まぁ何が言いたいかというと。
「完全に積んだ」
ということだ。先日から多種多様な魔法を少しずつ覚え、使用したりしている。しかし先日からめぼしい情報がない。もしかすると本当は魔法を使えるのは自分だけではないのか、そんな愉悦と不安が混じった微妙な感情さえも生まれてくるほどだ。
「何に積んだって?」
隣の席から顔を覗き込みわざとらしく存在をアピールしてくる少女。学校で会話をする。それだけ関係ではあるが、仲は悪くはない。
「俺史上最大に難関なゲームだ」
「祐希が積んじゃうゲームって存在してたんだね」
何故か本気で驚いている。
「俺を何だと思ってんだ」
「それでどんなゲーム?」
聞いちゃいねぇ…………
「開始からライフが一つ。どんな条件で何が起こるのか、全体的にわからない。ゲーム内の情報は全部自分で集めるしかなくて、明確なサポート役は存在しない」
「まるで現実世界なんだけど」
「大正解。ちなみに景品はない」
「えー」
魔法という不思議な存在知った。その前からのいつも光景。この心地の良さは数ヶ月のことでありながら、毎日繰り返していたために長年の習慣のようだった。
「なんだか祐希がお年寄りみたいな顔してるよ」
「うっせぇ」
そして放課後。無駄足を覚悟で適当に学校を見て回る。軽く見学して回っていたが途中で数学同好会とクイズ同好会に長く捕まったこともあって、昨日よりも多く行けていない。時間的にここが最後なのだが。
「…………?」
第二生徒会。普通の方の生徒会から貰った一覧を書いた紙にも、よく見れば書いてあったのだが、意味がわからない。部活ではあるようだが、何をする部活なのかはさっぱり不明である。よって、出来れば入りたくない。それでも中に人の気配もするので、聞けばいいかと思って扉に手をかけた。そこまでは良かった。
「開かねぇんだけど」
その開き戸が開かないことを誰が予想できるだろうか。
鍵が閉まってる手応えじゃない。天井に近い換気用の開いた窓から明かりが見える。扉を前に後ろに動かしてみると、何か棒のようなものでうまく固定されてしまっているようだ。
「誰か居ますかー」
隙間から下敷きを入れると、予想通りの手応えと何かプラスチックが床に倒れる音がした。
「失礼しまーす」
本棚と会議室のような配置の机。それと。
「祐希じゃん!」
三人の少女たちが居た。
「もしかして、礼音が言ってた人?」
「え、この人が?」
とか言いながら、観察するように見知らぬ二人の女子生徒に見られる。
「何の話だ……てか、あやねって誰」
「私の名前だよ。愛崎礼音。言ってなかったっけ?」
「俺がお前の名前呼んだことなかったろ。ていうかお前も俺の苗字知らねぇだろ」
「神崎じゃないの」
お前、どうして知ってんだよ。
「そっちの二人は?」
「第二生徒会の風里和佳です」
「同じく中町涼子」
「その第二生徒会って、何をしてるところなんだ」
この上なく当然な質問のはずだったが、二人は顔を見合わせる。
「知りません」
「知らない」
「どうしてだよ!部長呼べ!」
「呼んだ?」
そう言って手を挙げるのは愛崎礼音。そして俺はため息混じりに言った。
「お前かよ…………」
次もお楽しみください。