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俺は今、全てが見える

2014/10/20 投稿

 ある日の昼過ぎ、倒れた少年を抱き起こし、ベットに寝かせる少女が一人。

「何なのよ」

 一体どうなったのか。少女には検討もつかなかった。少年の言う通りにすれば、彼が倒れ、半時間も意識が戻らない。

 魔法の腕には自信がある、というかエスケープオブウィムプは魔法だけを破壊した。当たり前だ。魔法を破壊する効力を持つ、魔法なのだから。

「祐希ぃ」

「…………んん、あれ」

 救急車でも呼びそうな勢いで彼女が心配していると、少年が目を覚まし、キョロキョロと部屋を見回して、彼女を発見する。

「やっと起きたね。おはよう祐希」

「あぁ」

 間の抜けたような声が、小さくも大きくもない部屋に彼の存在を示す。

「まだ調子悪いのかな?」

 彼に訝しげな目を向けられ、いつもと違う様子に彼女は困惑する。

「なぁ」

 声を少し鳴らすように、うん、と彼に返事をする。もしも彼と恋人同士なら、別の緊張があったのだろうが。生憎彼女にそんな気はなく、ただ何を言い出すのだろう、という単純な疑問を抱いただけである。

「……え、どうしたの?」

 怪訝な顔をするばかりで、彼は何も言わない。普段の彼女なら、全く動じなかった。しかし目を覚ましてからの彼は、何かがいつもと違う。

「…………」

 その様子を見て、愛崎礼音は彼女に似ているなと思う。風里家当主で、綺麗で頭の良い、この世で一番嫌いな人間に。

「おかしな事を、聞くかも知れない」

「良いから言ってよ」

 愛崎礼音は彼を観察して、いつものように思考を探る。彼も頭の良い人間であり、手に取るように、とうまくいったことはない。しかし今は彼の思考が、どこを指しているのかわからない。

「俺は、生きてるか?」

「少なくとも死んでないね」

 できるだけいつも通りに、学校で彼と話すように、平静を装う。

「お前、俺が何を考えているか、まだわからないんだろう」

「うん。そうだよ」

「正解は、何も考えてない、だ。そして今もお前は、俺がどうしてこんなことを言うのか、不審に思っている。違うか?」

「そう……だけどね」

 彼の言うとおり、彼女は何一つ察さすることができないばかりか、状況さえも飲み込めない。

「俺は今、全てが見える」

「意味がわかないんだけど」

「何て言うんだろうな……そう、目の前にある因果みたいなのが、見えるんだ」

 頭がおかしくなったのかな。愛崎礼音は何も把握できない。彼の発言から魔法を使っている。そうではないだろうかと思うが、自らの記憶の中に該当する魔法はない。魔法について多くの知識を持っていると自負している彼女は、その中からたった一つだけ可能性を見い出す。

「ねぇ祐希」

「あぁ自分のこともわかったよ。俺は、大半の記憶を失ってる」

 やっぱりそうなんだね。小さく呟くように、声を震わせながら口に出す。

 ねぇ祐希、私も倒れそうだよ……

書き方変えてみました~。あ、今回だけですよ?

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