無用な詮索をする余裕もなかった
2014/10/16 投稿
たった三人だけの図書館には、共通した点がある。こんな夕方には、異常なほどの空間であるが、魔法使いが集まればこうなっても仕方ない。
「結局は、何の用なの。もしかして私、関係ない?」
「そうですね。直接的には関係ありませんが、あなたにも聞いて欲しいと思います」
「話をするために、あの影がいるんですか」
「あれはちょっとしたイレギュラーです。もう対処しました」
彼女の作った空間で、イレギュラーが起こるものかと思う。しかし実際に嘘をついているようには、思えない。もし虚偽だとしても、俺には見破れないので、素直に信じることにする。
「神崎祐希。あの技術を完成されましたね?」
「何の話ですか」
とぼけて目配せする。言わんとすることはわかるが、この場には愛崎礼音が居る。間違ったことは言えない。
「良いんですよ、彼女は知ることのできる立場にあります」
「え、祐希、何の話なの?」
「……そうですか」
謎の多い女性二人に囲まれ、もう軽く思考がパニックを起こしそうだ。
「もう一度、聞きます。神崎祐希、あなたは魔法創りだす技術を完成させましたね?」
「ちょっと待って、ま、魔法を創るってどういうことよ!?」
「完成したとは言えません。原始的な方法で、起動式を創っているだけのことです」
横目に愛崎が呆然としているのが見える。
「さっきの声を使った魔法もそうですが、あなたの魔法は、あなたが考えている以上に危険です。しかし同時に素晴らしい魔法技術の向上に協力しました」
「俺が、何か協力しましたか?」
「魔法で実現可能な現象を、いくつも見せてくれました。あなたをぜひ、風里家直属の研究者として迎えたいです」
「断るとわかっていて言うのは、やめてくれませんか」
彼女が本気でそう思っているのなら、俺の持つ知識は、彼女を含めた全ての人間に伝えるべきでない。それだけに価値があり、そして危険を孕んでいるのだ。
「魔法を一から創るなんてね。もう祐希は、人間やめるつもりなのかな」
「人間だとは、とても思えない芸当だと思います。なので、違和感を以前から感じていました」
気になることを言われ、無用な詮索をする余裕もなかった。
「私もそう思う。祐希は明らかに、人間としては規格外だよ」
そんなことを面と向かって断然されても、俺はれっきとした人間だ。まぁ自分が人間であることを、証明するのも難しいとは思うけど。
「どんな風に?」
「訓練も受けないで、初めから魔法を完全な状態で使えてるんだよ。普通の人間なら、まずありえないね。祐希から見れば、八千は普通以下なのかも知れないけど、私に言わせれば、筋は良い方なんだよ」
青山八千は一つの魔法を使うのにでも、短くても二時間以上は起動までを何度も繰り返した。言われてみれば、確かに俺は最初から魔法を起動できたし、今までそのことを変に感じたことはない。
俺にとって、それは普通だったからだ。
ちょっと説明っぽいですね……(´・ω・)スマソ




