図書館は物静かである
2014/10/13 投稿
図書館に通い続けて一週間が過ぎた。文化祭が終わり、この時期は特になんのイベントもない。本来は最優先事項にすべきものだが、学業を優先してしまったために時間が作れていなかった。しかし今は、幸いにも時間がある。
「お隣良いですか?」
「どうぞ」
特に混んでもいないのに隣に座ってくる人物を不審に思いながら、見向きもせずに続きを読む。
どれだけ調べても、当時の彼女についての情報が少ない。しかしある記述を見つけることができた。大きな図書館の端っこ。小さな本棚に並んでいた古い本。ここに当時の彼女について、名も無い人間が日記で記したものの写しがあったのだ。それも長々と書かれており要約すると。偉大なる魔女を私たちは認めないが、彼女は偉大であるので認めることにしよう。とまぁ、ワケのわからないことを書いてやがる。
「…………」
どうして自分はこんなことをしているのか、その理由は単純に怖いからだ。自分がどんな場所で存在しているか不明、それというのは普通に恐ろしい。ふと気づいて、隣に居る人間を横目に見る。……目が合った。
「やっと気づいたね」
「どうしてここに居る」
場所をわきまえて小声を心がけた。
「祐希が構ってくれないからだよ」
「冗談は程々にしろ、部活はどうした?」
元から何を考えているかわからず、不思議な雰囲気を纏い、人当たりの良い可愛い系の少女の類いだとは思っていたが、愛崎礼音という人間に俺の中で、神出鬼没なんてステータスが追加されそうだ。
「この頃、祐希がさっさと帰っちゃうからね。今日はみんなで着いて来たんだよ」
一応、周囲を確認する。
「他はどうした?」
「八千は補習、和佳は気乗りしないからって帰っちゃって、涼子はここに着いたら、どっか行っちゃった」
「積極的なのお前だけかよ」
「そうみたいだけど、他にやることもないからね。第二生徒会に来る依頼は増えたけど、ほとんどすぐに終わっちゃうし。折角文化祭で魔法を広めようと思ったのに、和佳の家が情報操作するから魔法に関する依頼もないしね」
彼女の文化祭での本当の企画目的を知ると共に、周囲に気を配っていた。別に何かしようってわけじゃない。ただ、変だったからだ。
「おい、愛崎」
「え、あぁーうん。閉じ込められたね」
異常に気づくまでに時間は要さなかった。図書館には静かなイメージがあるが、実際はどこからか小さな音は聞こえてくる。
「人の気配もないってことは、やっぱり魔法なのか」
「床に干渉できないからね。これは、閉鎖空間だよ」
彼女は足で床を叩くが、強さが変わっても音の大きさが変わらない。つまり床に干渉できず、閉鎖空間との境界に阻まれている。
「でも、領域の設定が凄く広いね」
「あぁしかも、誰も出てこないし、意味がわからん」
「どこかに一人居るみたいだよ、場所はわかんないけどね」
それをどうやって突き止めた。やはり愛崎礼音は、魔法とは別の能力も人並みではないのだろうか。興味深いがそんなことを気にしている場合ではない。
無用なトラブルに巻き込まれたかも知れない事実は、消えないからだ。
図書館と言えば、静かに勉強ができるというイメージありますよね。




