うん。パクった
2014/10/06 投稿
大観衆の中で愛崎礼音の企画した、魔法技能選手権なるものは進行していた。中町さんが見た目には何も起こらない干渉系魔法で勝ち進み、青山さんが二年生の先輩に敗北。まだ炎の制御と癒しの魔法しか使えないのに、よく武闘派の女先輩を相手に持った方だ。
トーナメントではあるのだが、少し変則的な組み合わせになっており、先ほど残りの先輩に愛崎が一撃勝利。
「やっぱり。強い」
愛崎も凄かったが、今は対戦中の俺に向けられた言葉なのだろう。
「それほど、でも」
魔法の起動式を頭に思い浮かべる。魔法を変えて、ハルートとマルートを連射する。
「空間干渉系」
「ご名答」
中町さんは、索敵と解析に長けている。子供騙しのボール攻撃もあっさり無力化され、泥沼の状態だ。彼女の魔法妨害からの反撃は、目を見張る早さだ。一歩間違えれば一瞬で意識を奪われる。
「これで。決める」
一瞬だけ動きが止まる。何か来ると思っていると、彼女の頭上に出現した光の球体が複雑な軌道を描いて飛んでくる。
「どう見ても、俺のパクリだな」
この短い待ち時間で完成させて来たようだ。
「うん。パクった」
「正直だな、おい!」
魔法を使う。彼女の制御する球体は、明らかに俺のバレーボールのより多い。ハルートとマルートに強度を上げる魔法をかける。
「そこだ」
一つを撃ち落とす。魔法をかけて補助をしなくても、このエアガンは元より魔法を妨害し、うまく使えば破壊や無力化も可能なのだ。
迫り来る当たったらヤバそうな光を撃ち、ギリギリの場合は直接叩き落とし、多方向からの場合は、適当に落ちてるバレーボールで防いだ。俺は天才的な反射神経を持ち合わせていないので、物凄い速さの物体を避けることなど、無理だ。
「あ、やばい」
そう思った瞬間に目の前で光が消え失せ、近くで倒れる音がする。音の方向を見ると、中町さんが後頭部から思いっきり倒れていた。
「中町さん、大丈夫か?」
「平気じゃない」
「無理しすぎだよ、涼子」
「私がテントまで運びますから、捕まってください」
青山さんがぶっ倒れているテントに、風里さんが彼女を運んでいくのを見送って、俺たちは向き直った。
「一応聞いとくが、この茶番は何のためにやってる」
「祐希と続きがしたかっただけだよ。他に理由はないね」
「お前は武器とか使わないのか?」
「私はこの身体が武器なんだけどね……バットでも持って来た方が良いかな」
「いや、邪魔なだけだろ」
そんなことを言う俺もどうかと思うが、そう思わせる彼女も如何なものか。人間であるかさえも怪しむべきなのだ。思いつく限りの対策をする必要があると、今から考えておくべきだろう。
別に私が何かをパクったわけではありませんよ。




