体育祭前の中二病
2014/09/30 投稿
俺の注文した商品には、細部の必要な点に注文をつけてはいた。別にこんなに黒よりも黒深い色にしろとか、魔法の起動式以外に中二病の香り漂う模様を頼んではいない。
「これを持ち歩けって、フザけてんのか」
一応は地味に大きい銀トランクケースが付属されており、両手用のもはやエアガンと言えども、サイズの大きいこの二つがしっかり収まる。さらには予備マガジンも入っており、こうして並べてみると中二病感が最大限に達する。検索してみると、この会社は注文のある部分以外は、勝手に素晴らしい改造をすることで有名だったようだ。
「免責事項にも書いてあるし、細かくクレームに対処してるな、地味に」
規約までは読んだが、その下の免責事項へを開かなかった。まさか重要なことが書かれているとは思えなかったし。
トランケースを閉じる。実は目に入ってはいたのだが、見ないようにしていたものがまた見えた。確かに注文はしなかったがしかし、ここまでやってくれるのは、最早親切を超えて嫌がらせの領域と言われても仕方ないだろう。
「ハルートとマルートってのは、エアガンの名前なんだろうか」
次に注文する機会があれば、同じものを注文しようと思っていたのだが、同じものを発注しても全く別の商品が届きそうだ。これは詐欺には当たらないんだろうか、と思いたくなるくらいには衝撃を受けた。
そんなこともあって体育祭の当日を迎えた。当時に中間テスト前でもあるので、第二生徒会の面々には元気がなさそうな者たちもいた。
「涼子と和佳も沈んでないで仕事してね。あとね、見てないで、祐希も手伝ってよ」
本当に学校の便利屋と化してしまった第二生徒会部は、ヒマ部の汚名を返上するべくして、体育祭実行委員を手伝っていた。彼女らに返上するつもりがあるのかは疑問だが、まず汚名をそそぐことになると思われる。要約すると、ヒマがない。
「どうして俺が手伝わないといけないんだ」
体育祭というのは、勝手に好きなやつが楽しんでいれば良い。今日の長い仕事は、俺の人生で初めて体育祭を嫌いにさせた。なので、グラウンドから死角なった自販機の隣で、サボっていることにした。
「学年主席がサボる体育祭か」
これでも主席なので、体育の点数も低くはない。クラスでは競技に複数参加するように、と勧められたが全力で拒否した。その結果、午後の障害物競争にだけ、出る事になっている。
「そこに居るのは誰だ」
近寄ってきたのは、恐らく先輩だ。彼を一見して、何かあっては面倒だと判断して、場所を変えることにする。
「神崎祐希。居た」
移動してすぐに中町さんに捕まる。
「探した」
「俺に何か用事があるのか?」
「ある」
相変わらず短文でやり取りをする彼女は、急いでいるようだった。
「借り人競争。学年主席あるから」
「誰も引かないことを祈るよ」
そう言いながらもグラウンドに戻り、愛崎が出場するということを思い出した。絶対引くなよ……
絶対に押すなよ!押すなよって!




