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隣の家の玄関は靴が揃えられてなかった

2014/08/26 投稿

 人生において不思議な出来事に遭遇する機会は多くない。ちょうど週末だったこともあり、そして俺の人生最大の奇妙な体験をした翌日の朝は存在しなかった。まぁ日も上がらないくらいの時間に寝落ちして、起きたら昼前だったというだけだけなんだけど。

「…………」

 夢だったのか。なんて呟こうと思ったりもしたが、顔を上げた先にあるのはほぼ真っ黒な外見をした分厚い本。夢で見たより太いなー、とか寝ぼけながら次第に現実を実感する。

「どうやってやがる」

 ついに妄想が現実を侵食し始めた。当たり前に思う現実逃避をあっさりと乗り越えて、目の前の本を開いた。申し訳程度に書かれた魔法陣に、どっさりと文字が刻まれている絵。続いて右のページ書かれた詳細。どう開いても何かのの設定資料と偽れるくらいに胡散臭い。だが、これは恐らく本物だ。

「……ないな」

 しばらく読み進めてわかったことがある。ここには名前がない。少なくとも、本には魔法の個別の名前がない。覚えにくすぎて困る。これを覚えられるなら、記憶力に相当の自信を持っていいだろう。

「記憶力を底上げできる便利な魔法は、やっぱないよなぁ」

 一通り目を通したつもりだが、見つからない。

「とりあえず何か使ってみようか」

 適当にページを開く。どうやら遠視系の魔法。千里眼のようなものだろうか。

「集中しろ、俺」

 書かれた文字列を思い浮かべる。文字列が次第に鮮明になってくる。完全になった瞬間に途切れ、思い浮かべた文字列が弾け飛ぶ感覚を感じる。

「おぉ、なんだこれは」

 壁の向こう側が見えるぞ!

「でも、なんか、気分悪いなこれ」

 輪郭は見える。立体があることは認識できるが、その先にあるものまで見えるというのは違和感が残る。

「凄いな。隣の家の玄関の中まで見える」

 遠視の状態のまま、本を見てみる。驚くことに文字が認識できる。本の下にある床まで認識できるのに、本の文字が見える。

「やっぱ気持ち悪い……」

 慣れるには時間がかかりそうだ。

「って、あれ。これどうやって解くの!?」

 解除方法はない。発動条件を見ると、目を開けていることって書いてある。だが瞬きをしてみても変わらないので、しばらく目を閉じた。

「あ、解けた」

 何度か発動と解除を繰り返してみたが、恐らくは『目を閉じた』という認識が必要なんだろう。

 この魔法の利点はもちろん壁の向こう側を見ることだ。ただ使ってみてわかる欠点もある。それは気分が非常に悪くなる。軽い乗り物酔いに似たような感じだ。あとは視野の限界以上は霞んで見えないということくらいだ。

「遠視っていうよりは、透視に近いか」

 自分の視力で見える範囲と同じなのだから、遠視とは呼びにくい。それにも関わらず、遠視系の魔法と書いているのは、何か意味があるのだろうか?

 考えるより先に手を動かして辞書検索してみた。遠視という単語はこれに全く当てはまらない。普通に考えれば、透視で良い。…………なるほど、わからん。

「それにしても、魔法って地味だな」

大体このペースでゆっくり進みます!

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