流石の俺でも意味不明だぞ
2014/09/22 投稿
ご存知の通り神崎祐希という人間に、何かを理論的に教える能力が備わっていない。挙句の果て。教え方さえもわからない魔法という奇妙なものを教えろというのだ。
「どうして魔法が知りたいんだ?」
心配そうな様子の青山八千という少女。だが横目に見える愛崎がやる気に満ちている。もはや彼女の依頼を断るという選択肢はないようだったので、随分と事務的な質問と感じながらも聞かないわけにも行かない。
「ありがとうって、言いたいんです」
「事情はよくわかったよ。祐希に任せるね」
突然に気力に満ち溢れていた彼女から、そのやる気がなくなる。
「おい、待て。流石の俺でも意味不明だぞ、何がどうした?」
「私は風里と言います。もしかして青山さん、お相手は既に亡くなった方ですか?」
「はい」
そう言いながら申し訳程度に首を縦に振る。そこまで聞いてやっと俺は納得する。
「残念ですが、亡くなった方に魔法は干渉できません。いえ、正確には現代の魔法には、それを可能とするものがありません」
人間はもちろん、ペットや動物。命あった存在が、それを亡くしてしまった瞬間に魔法は無力になる。魂という概念は人間の思想にのみ存在しているが、俺たちが知る魔法の世界には存在しない。
「知ってます。でも言いたいんです!」
緊張して小さく見えていた彼女から、初めての意思を感じる。
「でもね。今の私たちは何もできないよ」
「でも可能性ある。魔法を一から創ること」
愛崎の知る俺たちには、中町さんの言うような魔法を創る技術はない。
「それも聞きました。魔法を自由に創れる人は、いないんですよね?」
教えを乞いに来るだけあり、知識はある程度は持っているようだ。
「申し訳ないけど。それを知ってるなら、青山さんはどうしたいんだ」
返答は察しがついていた。
「……魔法を創りたいんです」
「だから、魔法を知りたい、か」
チラッと隣で見た目にはわからないが、やる気を失っている部長に視線を送る。
「……?」
少し首を傾げ、ハッとなって立ち上がる。
「あのね、青山さん。私たち第二生徒会に入らないかな?」
「え、えっと。私は部活にも入ってないですから、大丈夫なんですけど。この第二生徒会って、何をする部活なんですか?」
どうして部活に入っていない彼女が夏休みに学校に居るのかは疑問であるが、質問は至極当然である。しかし俺たちを盛大に困らせるのは言うまでもない。活動実態無しから、最近になって学校の便利屋に昇格しそうではあるが、本来の第二生徒会は部活動ではなく、魔法に少なからず興味を持つ者が集まった同好会でしかない。元より活動目的があってないようなものなのである。
「まだ新人の俺が言うのはどうかと思うが、基本的にボランティアだろう」
「そうだね。でさ、どう青山さん、魔法を覚えるついでに第二生徒会に……」
何を考えているのか。わからないのが、いつもの様子である愛崎礼音。この時ばかりは、考えが見え見えの弾丸のような勧誘の言葉を繰り返す。中町涼子と風里和佳の個性の強い二人が、どうして第二生徒会という活動内容不明の部活に居るのかと思ったこともなかったが、目の前の光景を見る限り、これに負けたんだろう。
「わ、わかりました。私、に、入部します」
後に行くにつれて声が小さくなっていく。この短時間で表情に明らかな疲労感が生まれた。恐るべし、愛崎礼音と言わざるを得ない。
それから今日はとりあえず体験入部ということになり、一頻り自己紹介などワイワイと騒いだ。
まだここから展開しますよぉぉ~




