手紙の主は存在しない
2014/09/06 投稿
物言わぬものは口もなくして雄弁に語る。心理学者に言わせれば人間もその類なのかも知れない。
「練習時間に呼び出してすみません」
依頼者と言えども先輩なので、礼儀だけはわきまえておく。
「話って?」
「犯人はわかりました。ですので、お帰りください」
「は?」
彼女は顔を顰める。
「それ、犯人は誰だったかは言わないってこと?」
「先輩が一番よく犯人が誰で、動機が何なのか。わかってるんじゃないんですか?」
「…………」
状況を掴み兼ねているらしい。ただでさえ新設の何をしてるのか不明で、謎の多い第二生徒会だ。まぁ今の今まで活動実態がなかったので、不明というか何もしてなかったんだが。彼女が俺の言葉をどう取るか迷うのもわからなくはない。
「手紙の主は存在しない。違いますか、先輩」
「どうして」
「はい?」
「どうしてそう思うのって聞いてるんだけど」
心底、どこからどう見てもですよ、と言いたい。
「最初は、脅迫状の文字が綺麗に書きすぎてて違和感がありました。あと内容も悪戯だと思うのは不自然すぎですし、いきなり来るにしては内容が直球すぎです。それと大会のトーナメント表を見ましたよ。男バレはライバルの強豪校が出場を辞退してるのに対して、女バスは格上のライバル校に、前回も、前々回も、負け続けてるって聞きました。脅迫状が男バレから届いたってなれば、口実になるって考えだと思いますけど、大会に出なかったら本末転倒ですよ?」
「祐希。ちょっと言い過ぎ。あと祐希は気づいてないみたいだけど、この魔法は文章に隠しても、丸わかりだから意味ないよ」
近くまで来た愛崎に肩を叩かれ、例の物に魔法が組み込まれていたことを知る。後で文章に魔法を隠す方法を聞いておくことにしよう。
「あなたたち魔法がわかるの?」
「俺たち第二生徒会は、魔法使いの集まりなんですよ。まぁ俺は駆け出しですけど、先輩みたいな、にわかの魔法は通用しません」
まだ魔法の存在を知っていて、使える人が居たというのは意外だった。
しばらくして彼女はお礼だけ言って第二生徒会部室を去っていった。いくら言いたいことがあろうと、大きな大会の前なのだ。練習時間は惜しいのだろう。
「そもそも今回の依頼。どこからを貰ったんだ?」
「あの人、和佳の親戚でね。和佳には頼まれた時に、狂言だから気にすることないよって言ったんだけど、心配だっていうから祐希に頼んだの」
「お前は面倒なことを自分でするってことを覚えろ」
その間にポスター作った。なんて愛崎がドヤ顔をするので、テスト勉強の代わりに魔法について教えて貰うことで、納得した。
魔法に個々にある文字列は、魔法の起動式であるらしく。これは一定のルールに基づいて、文字として記述するだけで効力を為すとのことだ。その他にも色々と教わったが、それによって疑問が一つ生まれた。
愛崎礼音という人物は一体何者なんだろうか?
章タイトル的に終わった感出てますが、まだまだ続きます。




