活動日誌は箇条書きだった
2012/09/05 投稿
いつの日も調査には情報が必要だ。依頼主に話を聞いた後、事が大きくならないように注意しながら調査を進めていた。そして進展することは何もなく時間だけを一時間ほど浪費した。
「喧嘩してたって?」
依頼主の友人の話。男子バレー部と練習時間の食い違いで対立していたらしい。その後、早々に女バスの顧問にも真意を確かめ、男バレにも練習場所に訪問して話を聞くことにした。
「俺たちも悪かったとは思うけど、あっちも今度の大会での結果次第で納得するって約束したんだ。文句を言いに来られても困る」
「いやいや文句とか、そういうんじゃないんです。ただ今度の女バスの大会のトーナメント表の写しとか持ってないかなぁと思って。やっぱり気になりますよね」
「悪いが人のことまで気にしてる余裕はないんだ」
思ったより快く話を聞かせてくれたが、やはり大会が近いだけあって練習にさっさと戻って行ってしまった。問い詰めて邪魔をするのも申し訳ないので、こっそり部室にお邪魔して、女バスと男バレのトーナメント表を写真に取らせて貰った。
「勝手に写真に撮らせて貰いました。第二生徒会っと」
撮った後に男バレの顧問に許可を取ったから問題ないだろう。多分。目的達成の見込みが立ったので、女バスが練習している体育館に来た。
ここまで来ると、もうワクワク感はなく。茶番に駆り出されていたのだと気づかされた。
「後で良いんだけど。例の件で報告があるから、休憩時間にでも第二生徒会に来てって言ってたって。キャプテンに伝えといて」
近くに居た女バスのマネージャーらしき人物に声を掛けて、第二生徒会の部室に戻る。勘違いしている全ての生徒に言いたいが、第二生徒会は委員会でもなく、無論のこと正式な生徒会でもなく、部活動の類なのだ。
部室に入ると必死そうな様子で、風里和佳と中町涼子が黙々とテスト勉強している光景と、その隣で何かを書いている愛崎が居た。
「何書いてるんだ?」
「秘技的魔法研究部、通称ヒマ部の活動日誌。まぁ手書きじゃなくて魔法で書いてるけど」
そういうタイプの魔法もあるのか。そう聞こうと思った矢先。
「第二生徒会が発足し日に、日誌書くの面倒で考えた応用なんだけどさ。これが中々便利なんだよね」
「暇潰しがてらに仕組みを聞かせてくれ」
「このノート自体に魔法を書き込む。第二生徒会を指定範囲にして探査系統の魔法で現状を読み取って、データのログみたいに最新から順に書き込んでる」
詳しく聞いていると、どうやら書き込んでいるというのは語弊があり、元々紙にインクを垂らしておいて、その形を変形させることで文字にしているようだ。ただページ毎に魔法を書く必要があり、第二生徒会のその日の活動開始から終了までであるので、一度終了してしまうと魔法の記録が途切れてしまうから、勝手に書いてくれるというわけではないようだ。
「ん、誰か来たんじゃないですか?」
「たぶん依頼主だ」
それを聞くと風里さんはすぐに問題集に目を落とすが、同じく勉強中だった涼子が来客を、どうぞ、と招き入れる。
「犯人わかったの?」
その表情は不安げでどこか涼しそうに見え、その様子は若干だけ不安そうで緊張しているようだった。
そんな彼女の一挙一動は、語らずして真実を雄弁に物語るのであった。
ここからどんどん第一章進みます。




