初仕事と脅迫状は突然に
2014/09/04 投稿
期末テスト一週間前。授業が短縮時間になるだけで、特にいつもと変わりのない。そして、これが問題である。
「テスト前なのに、どうしてここに居るんだよ」
場所は第二生徒会室と言うと語弊があるので、第二生徒会の部室と言っておこう。この部活の最大の問題は名前だと思っていたが、部を構成する顔ぶれに問題があるようだ。
「祐希も来てるじゃん」
「まぁそうなんだが……」
運動部ならまだしも、文化部で活動をしているのはここくらいだろう。活動と言っても、集まってそれぞれに好きなことをしてるだけだが。
「何をするわけでもないなら、帰って授業の復習でもしたらどうだ?」
「本当ならそうだけどね。今日は、第二生徒会の初めて活動依頼が来たから」
「さらっと衝撃発言してるぞ、お前」
本当なら別に驚くべきことではない。本来の第二生徒会の役目は、選挙で選ばれた方の生徒会の代わりに、答えられない生徒の要望に答えるというものだ。すっかり忘れてしまっていた。
「とりあえず蛍光灯の交換と空調の整備なんだけど」
「意外に切実っぽくて驚いたな。で、どこの?」
「三階と四階だけど、それはもう私がやってきた」
来て早々に一人でやっちゃったのかよ。
「生徒からの切実な依頼はこっち。空調と蛍光灯は阿木先生についでに頼まれただけね」
顧問から頼みだと聞いて、面倒くさかっただけでは。などと思ったが、この通称ヒマ部の顧問でいてくれているだけ、ありがたいと思うべきなのだろうか。
「それで生徒からの依頼の内容は?」
「今日の昼に女子バスケ部のキャプテンに脅迫状が届いて、全国大会に出るなら痛い目を見るって書いてあったらしいんだよね」
恐らく口頭で依頼されたんだろう。メモ用紙をヒラヒラしながら、書かれている内容も見ずに言う。
「しかも今日か。女バスの顧問には言ったのか?」
そんな脅迫状が悪戯の可能性もあるとは言え、出てきてしまえば問題になる。学校が問題にするのは確実であるが、恐らく問題になってしまえば犯人が警戒してしまい、特定は難しくなるだろう。関係する教師団の耳に届けば、時間はあまりないと思っていい。
「知ってるのは阿木先生だけ」
「それは大丈夫なのか?」
大丈夫も何も。そう前置きしてから彼女は気だるそうに言う。
「阿木先生に対応してくださいって言ったら、面白そうだから調べてみればってね」
「なるほどな」
こっちも早々に解決というか対策しようと思ったが、何故か失敗したということか。やっと、阿木先生の性格が読めてきたぞ。
「調べるのは良いとして、そこの黙って問題集を解いてる二人はどうするんだ?」
「祐希がやるんだよ?」
何を仰っているんですか、あなたは。心の中で呟いて顔に出さないようにする。
「私は二人に勉強教えないといけないから。それとも祐希が代わりに教えてくれる?」
「…………わかった。行ってくる」
どこからともなく聞こえる運動部の掛け声だけが、人のいない放課後の廊下に響き渡っている様子は、何か楽しげにさえ思えたのだった。
そろそろ第一章の本編に入ります。




