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想い

Bonds of ten years after【last chapter⑦】想い


 咲空さくらがいなくなってからもう10年は経ち、愛翔あいとはもう社会人になっている。相変わらず、愛翔の心の中にはいつも咲空がいた。あの時の想いは深刻なほど愛翔の心を傷つけもしたが、絶対に忘れたくない本当に好きだった咲空を、自分の心だけが証明してあげれると決心して、咲空の存在を胸に咲空の分まで生きようと頑張ってきた。あの時触れた咲空は必ずいたと信じ続けていたのだ。今でもまだ彼女が消えたあとのまま、町にいるかもと、習慣の様に目で探してしまう愛翔だった。


「おつかれさまでした。」


 愛翔は夕方になり仕事をいつものように終わらせ帰る。今はもう仕事の関係で違う町に住んでいた。家族とも離れて暮らしてはいるが、週に一度のお母さんへの電話はしている。


「うん。今週も無事おわったよ。そっちはどう?・・・・」


 電話をしながらいつものように町の中にある自然公園を突っ切り、ゆっくりと駅へと向かう。この秋空の夕日がまた綺麗に公園へさし込み電話をしながら眺める。

 すると、歩く先のベンチに、見たことのあるような女性が座っていた。愛翔は話の途中だったが携帯を耳から自然と離していた。呆然ぼうぜんとなった。


「もしもし?愛翔あいと?もしもし・・・?」

母の声が離れた携帯から聞こえるが、愛翔には聞こえてなかった。



 あの姿あの顔、あの時とは違い大人の女性にはなっていたが、間違いない。あれは咲空さくらだ!

愛翔の胸は苦しくなり、心臓を押さえつけるように、拳を胸の前で握りしめた。ゆっくりと咲空の方へと信じられないという想いで歩いていく。携帯をポケットへいれるのと交換で、SAKURAのプレートを自然に手にしていた。


すると、咲空の方も近づいてくる愛翔に気付き顔を見た。咲空はとても驚いたような顔をしてから、立ちあがり、愛翔の方へと同じようにゆっくり歩いてきた。愛翔は言葉が出ない。咲空は、まだ近づく前からあの綺麗な声で質問してきた。



「あなた、空高あきたかでしょ?間違いないあなた空高よ!」

咲空が何をいってるのか意味がわからないが、とにかく目の前にいる咲空をみて、込み上げて来る10年間の気持ちが抑えきれなくて愛翔の目から涙が流れた。



空高あきたかどうしてあの時、あなた消えてしまったの?・・・・あなたは突然わたしの前から、きりの様に白く消えてしまった・・・・どれだけわたし泣いたと思ってるの?!どれだけ苦しんだと思ってるの?・・・」



 咲空のかわいい猫のような吊りあがった目から、留め止め用もなく涙があふれて、両手で口をふさぎながら気持ちを抑えようとしている。



「わたし10年間、ずっとあなたのことを探し続けてきたのよ!・・・あなたは幻じゃない。あなたはいたんだって、確かにあなたの腕を触る感触、あなたと握った手はそこに存在していたって確信していたもの・・・」


 そう言いながら咲空はAKIのプレートを出してそれを愛翔へと見せた。愛翔もSAKURAのプレートを見せて、咲空を見ながら言葉は出なかったが、静かに涙を流しながら大きくうなずいた。




 すると、咲空は愛翔の胸をドンドンと叩きながら、今までの苦しみをぶつけるように泣いた・・・・咲空の目からは涙が尽きることなく溢れるように流れた・・・。そして、咲空を抱きしめながら愛翔も10年間の想いが口からこぼれだす。



「君はあのとき、光の粒のように目の前から消えてしまった。10年間、翼を失った白鳥のように、僕の心はズタズタだったよ。君がいる時の僕は大空を自由に気持ち良く飛ぶことが出来たし、君がいると安心できた。君は僕の翼だったんだって、君を失ってから気づいたんだ。白鳥には翼は、なによりも大切なものだ。翼を失って、どうやって空を飛べばいいっていうんだい?どうやって生きていけばいいんだい?翼は体の一部だ。もう僕の前からいなくならでほしい・・・」



 二人はまったく同じ体験をまったく同じ時期に体験していた。これが運命というものなのだろうか。彼女の名前ははるかやっぱり、空をかもしだす名前だった。二人はその時の思い出、そして想い、10年間過ごした日々をゆっくりと時間も関係なしに、話を尽きることも無く続けたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日もさわやかな気持ちのいい朝、愛翔は言った。


「かわいいお嬢ちゃん二人、お母さんに怒られる前に早く食べて、幼稚園へいくよ」


と、優しく二人の娘をなでて、玄関へといそぐ。



「今日もいってらっしゃい」

かわいい笑顔で見送るのは、はるかだ。



プレート同士をカチッと合わせ、音を鳴らした。


玄関に置いてあるプレートを持って、プレート同士でキスをして、見送るそれがこの家の習慣しゅうかんだ。


そんな、お父さんお母さんの姿を見て、二人の娘も真似して、それぞれのプレートをポケットから出し、姉妹でプレートをくっつける。


「きゃははは」


と、ふたりは恥ずかしそうにしながら、笑顔でわらった。



三人は遥という翼を、幸せと共に心につけていた。同じタイミングで仲良く 遥に向かって言う。



「いってきまーす」



遥はうれしそうな顔で、見送った。



【last chapter⑦】HAPPY END


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