光
Bonds of ten years after【chapter⑥】光
愛翔は、咲空と海へ行き確信した。咲空は僕にとって掛け替えのない女性で、決して無くしてはいけないと思っていた。彼女は理想の女性だけでは無く、もう二人の思い出が積み重なって愛翔の心に咲空の刻印がジュっと押されてしまっていたんだ。こんな子とはもう出逢えないだろうと確信していた。
次の日も夕方の堤防沿いの川で待ち合わせをして、咲空と逢い二人で、愛翔の家へ楽しく向かった。
そして、咲空も昨日のことを想うと、胸が苦しくなるほど愛翔の事を好きだった。
「愛翔。わたしがあなたを守るから^^」
急に言われて愛翔は驚いた
「ま・・守るって・・・・・^^; 出来れば、おれが守るほうでお願いしますw」
二人は笑った。自然と咲空は愛翔の腕に腕を絡ませていた。愛翔の心は舞い上がった。
「ただいまー」
なんだか、いつもより元気な愛翔の声を聞いて、お母さんがキッチンから玄関へめずらしく出迎えに歩いてきたが、愛翔は咲空と話を止めることが出来なかった。
二人が仲良く話していると、お母さんが不思議そうな顔で愛翔に聞いた
「あんた。誰と話してるの??」
「だれって 咲空だよ 何言ってんの母さん」
そう言って、愛翔はお母さんの顔を見たけど、まだお母さんは不思議そうな顔をして黙っている。
「・・・・・・・」
真面目なお母さんの顔の意味がわからなくて横にいた咲空をみた・・・・・
すると咲空の姿が急に薄くなっていくように見えたんだ。
愛翔の理解できない頭は混乱しているのだろうか。目を何度も瞬きをしてみたけど、やっぱり咲空は薄くなって透明になっていく・・・・・。それどころか、ぼんやりと白く光りはじめた・・・・。
怖くなった愛翔は咲空の腕を掴もうとした。だが、愛翔の手は咲空に触ることが出来ず、すり抜けてその腕を掴むことが出来ない!
愛翔の目も不安げになりながら信じたくないと悲痛な顔を横に振って、何度も何度も必死で掴もうとしている姿をみて、咲空の目から静かに頬をスーっと涙がつたった。
そしてまた、あの高い綺麗な声で、ゆっくりと咲空はしゃべった。彼女には今起こっていることが何なのかわかっているのだろうか・・・・。
「愛翔・・・・・・あなたと一緒に過ごせた時間・・・・とても幸せだったよ・・・・あなたが悲しい顔をするとき、わたしも苦しかった。あなたに優しくされて、わたしはもっと愛翔のこと好きになったよ・・・・。愛翔大好きだよ」
咲空の涙は綺麗すぎて、光ながら途中から重力に逆らって上へと四方へ上がり消えていくようだった。そんな悲しそうで消えそうな咲空がたったそれだけの言葉をいったあとだった。
咲空の姿はとても綺麗で咲空は白い光の粒になっていく。
その光の粒は、上へと小さく消えながらゆっくりと昇っていった・・・・そして、光さえも静かに消えていった・・・・。
愛翔は混乱しながら目の前にいなくなった咲空に驚いて、靴もはかず、すぐに玄関のドアを開けて探したが咲空はいない・・
部屋にもいったけど、いないんだ。胸が苦しくなって部屋には一人だけなのに、喋り掛ける・・・。
「咲空すごく不安だよ・・・・どこにいるの?・・・・・・」
愛翔はハッと思いつき自転車を走らせた。町の堤防沿いへと必死でむかったのだ。でも、やっぱり誰もいなかった・・・・
自転車をとめる事もせずに、そのまま道に倒して、ゆっくりと二人が出会った堤防へと一人で歩いていった・・・信じたくはない・・・
思えば愛翔は、ひとりで空想をするのが好きだった、そんな中 咲空は自分の理想すぎるほど可愛くて、それ以上の完璧すぎるほど完璧な女性だった。まるで、天使にも見えたほどだ。彼女はこの世に存在しない人だったのだろうか・・・自分の想像の中の女性だったのだろうか・・・。明日も会おうと約束したのに、会えない事が多々あったのはこういうことだったのか?。ポケットからSAKURAと書かれたプレートを出して、しゃがみこみ、そのプレートを両手で顔の前で、ぎゅっと祈るように握りしめた。
そして、悔しそうに、また胸が張り裂けそうになりながら・・・・
「お・・・おれ・・・・これから・・これから、咲空と、もっと色々思い出作ろうと思ってたのに・・・咲空にね。まだ話したいことあるんだよ?咲空にね。もっとしてあげたいこと、いっぱいあったんだよ?・・・・なのに君は、僕の前からいなくなるの?・・・・戻って来てよ。さく・・・・・ら・・・・」
あたりはもう夜になり誰もいない中、自転車はそのまま道に転がっている。
胸があまりにも苦しくて、それ以上声がでない。
プレートを強く握りしめながら、愛翔の目からは、涙がこぼれおちた。
咲空の姿は消えたままだった・・・・。
【chapter⑥】fin