石川 咲子
石川咲子はセントラルパークにいた。
「おかしいな……」
園内をひとり歩きながら、何かを探していた。
ウサギの顔の形をしたポシェット。
それは、母親が咲子に買ってくれた、最後の誕生日プレゼントだった。咲子はその大事なポシェットを何処かで失くしてしまったのだ。
思い当たる所を全部必死で探し回ったが見つけることが出来ず、最後に思い当たった場所が、先週クラスの皆と遠足で来た国立自然公園、セントラルパークだった。
「でももし、ここになかったら……」
不安で泣き出しそうになるのを必死で堪えながら、咲子は辺りをもう一度よく観察した。ブランコ、滑り台、ジャングルジムに鉄棒、子供用の遊具広場。
何処にもポシェットは見当たらない。
平日の昼過ぎということもあって、園内に人影は少ない。
咲子は遊具がら目を離し、いくつか点在しているベンチの方に視線を移す。
すると、一人の少年が彼女の目に留まった。
咲子より少し年上だろうか、眼鏡をかけた少年がベンチに座っている。手には小さなバッグのようなものを持っていた。
それは、まさに咲子の探しているポシェットだった。
「あー!! 私のウサちゃん!!」
咲子は思わず大きな声で叫んだ。