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消えゆく青春の光ー小学生白書 第Ⅰ部ー  作者: Benedetto


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13/21

病院

 淳は、青葉中央病院の待合室のベンチに座っていた。


 彼は一人ではなかった。


 少し離れたベンチでは、明仁の母親が手で顔を隠しながら、すすり泣いている。


 明仁の家に、周と遊びに行った時、淳は明仁の母親に何度か会ったことがあった。


 小柄で黒髪に少しウェーブが掛かっていて、その大きな瞳が明仁と同じだった。


 部屋で明仁と遊んでいると、いつも必ずオレンジジュースとショートケーキを持って来てくれた。そして、いつも笑顔でこう言った。


「いつも明ちゃんと遊んでくれてありがとうね。明ちゃん、淳くんとはゲームだけじゃなくて、大好きな本の話も出来るってすごく喜んでたのよ。これからもずっと仲良くしてやってね」


 しかし、母親はもう笑っていなかった。もしかしたら、もう二度とあんな風に笑うことはない、そう思うと淳の頬に一筋の涙が流れ落ちた。


 しばらくして、明仁の父親がやって来た。背は余り高くないが、肩幅の広いがっちりした体格をしていた。意志の強そうな濃い眉毛が明仁と同じだった。会社からそのまま来たのか、スーツにネクタイを締めている。


 父親は淳の方をちらりと一瞥したあと、母親のいるベンチへ向かった。


 父親が母親から詳しい事情を聞いていると、手術室から担当の医師が出て来た。医師と両親は小声で何かを話しはじめた。


 淳はベンチに座ったまま、手を合わせて祈るような姿勢のまま、動かなかった。いや、彼は動けなかった。


 話が終わると、父親の方が淳の座っているベンチの方へやって来た。


「川上くん、今日は本当にありがとう。明仁の傷はそれほど酷くはないそうだ。幸いにも、落下した時、最初に蜜柑の木の上に落ちたのが良かったらしい。木がクッションとなってくれたようだ。川上くんにもいろいろ心配かけたね。家まで送っていくよ」


 母親の方が少し離れたところから、涙をハンカチで拭きながらお辞儀をしている。


 淳も軽くお辞儀を返す。そして、明仁の父親の後ろについて病院を出た。


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