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プロローグ
小学生最後の夏休み。
ギラギラと照り付ける太陽の下、いつもの通学路であるアスファルトの上を、少年は歩いていた。
両親が共働きの少年にとって、何処かへ連れて行ってくれとお願いすることは憚れ、ひとりぶらぶらと外を歩きながら時間を空費する以外にすることがなかった。
次の角を曲がれば、あとは学校へと続く一本道だった。
もし、角を曲がったとき、学校への道がなかったら……、もし、別の世界が広がっていたら……、少年はひとり想像してみる。
彼が苦笑しながらいつもの角を曲がると、ちょうど烏が一羽、彼の眼前を飛び去って行った。
すぐ傍のゴミ捨て場のロックが外れていて、その中のゴミ袋のひとつが無残に破られている。
その先には、いつもの学校の景色がぼんやりと拡がっていた。
飛んで行く烏を眺めていると、ふと彼の頭にひとつの考えが浮かんできた。