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追い出された貧乏男爵令嬢、ぬいぐるみ職人として公爵家に拾われました 〜宝石の名を持つドレスは精霊と辺境を救います〜  作者: かも@ろん


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幕間 静かに見つめるもの

第32話 石は、覚えている


 その違和感に、最初に気づいたのは、足元だった。


 仕立て屋の裏手。

 作業に行き詰まり、私は気分転換に外へ出ていた。


 建物の脇には、小さな空き地がある。

 雑草がまばらに生え、踏み固められた土が露出しているだけの場所だ。


「……?」


 その土の色が、いつもより濃い。


 昨日まで、こんなだっただろうか。

 しゃがみ込み、指先で触れてみる。


 ひんやりと、落ち着いた感触。

 不思議と、嫌な感じはしなかった。


「……落ち着く」


 思わず、そう呟いていた。


 私は、その場に腰を下ろし、

 膝の上に布と針を広げる。


 次に仕立てる予定なのは、

 公爵家の庭仕事用の、簡素な上着。


 丈夫で、動きやすく、

 けれど着る人の邪魔をしないもの。


 私は、布を撫でた。


 すると――。


 ふわり、と。


 風でもないのに、布がわずかに持ち上がった。


「……?」


 目を瞬く。

 けれど、周囲に異変はない。


 ただ、

 足元の土が、静かに、温かい。


 まるで――

 見守られているような。


 私は、首を振った。


「……疲れてるのかな」


 そう思いながらも、

 針は不思議なほど、滑らかに進んでいく。


 縫い目は安定し、

 線は迷わず、形はぶれない。


 ――良いものが、できそうだ。


 その夜。


 作業机の隅に置いていた、小さな宝石の欠片が、

 月明かりを受けて、淡く光った。


 地味で、目立たない色。

 けれど、確かな重みを持つ石。


「……綺麗」


 思わず、そう呟いた瞬間。


 石の奥で、

 何かが、ゆっくりと目を覚ました。


 深く、静かに。

 何百年も、何千年も、

 待っていたかのように。


 ――石は、覚えている。


 大地を守る役目を。

 そして、

 その力を“形にする者”を。


 まだ、名も告げぬまま。

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