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追い出された貧乏男爵令嬢、ぬいぐるみ職人として公爵家に拾われました 〜宝石の名を持つドレスは精霊と辺境を救います〜  作者: かも@ろん


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第五章 広がる噂、宝石の名を持つドレス

第22話 そのドレスは、どこの仕立て?


 お茶会の翌日から、屋敷の空気が少し変わった。


 使用人たちの動きが慌ただしい。

 メイドの間で、ひそひそと囁き声が交わされる。


「昨日のドレス、本当に素敵でしたね」

「公爵令嬢様が、ずっと笑っていらして……」


 エレノア様の着ていたアイリスクォーツのドレスは、

 確実に、人の記憶に残っていた。


 公爵夫人のもとには、さっそく何通もの招待状と、

 控えめな――しかし明確な問い合わせが届き始めた。


『あのドレスは、どちらの仕立てか』

『同じものを誂えることは可能か』


 私は、その様子を少し離れた場所で見ていた。


 ――まだ、私の名は出ていない。


 けれど、それでいい。


 今はただ、

 エレノア様のそばで、縫えれば。


第23話 公爵夫人の決断


「あなたを、正式に公爵家の仕立て役にします」


 そう告げられたのは、午後のお茶の時間だった。


 公爵夫人は、穏やかながらも揺るぎない声で続ける。


「社交界は、流行を求めます。

 けれど私は、あなたの作るものが“流行”ではなく、

 “残るもの”になると確信しています」


 私は、思わず息を呑んだ。


「……私で、よろしいのですか」


「ええ。むしろ、あなたでなければ困ります」


 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「条件は、これまでと変わりません。

 エレノアのそばにいること。

 そして、あなたの時間も、大切にすること」


 私は、深く頭を下げた。


 ――必要とされている。


 それを、はっきりと感じた。


第24話 宝石の名を冠する理由


 その日から、私は公爵家のための服を作り続けた。


 昼の茶会用のドレス。

 庭園散策のための軽装。

 そして、エレノア様のための普段着。


 どれも、過剰な装飾はしない。

 けれど、線と布の重なりで、品格を生む。


「……このドレスにも、名前を」


 公爵夫人のその一言で、私は考え込んだ。


 宝石。


 前世で、何度もモチーフにした存在。

 小さくても、確かな輝きを持つもの。


「宝石の名を、冠したいと思います」


 ドレス一着一着に、

 意味と物語を与えるために。


 こうして、

 ジュエルシリーズは、正式に始まった。


第25話 小さな仕立て部屋の夢


 ある日、公爵夫人は、私に一枚の図面を見せてくれた。


「屋敷の外に、小さな建物を用意しましょう」


 そこには、

 作業場と、応接用の部屋が描かれていた。


「あなたの世界を、屋敷の中だけに閉じ込めるつもりはありません」


 胸が、どくんと鳴る。


「……お店、ですか?」


「ええ。すぐに大きなものにする必要はありません。

 昼用のドレスと、普段着だけでいい」


 私は、思わず笑ってしまった。


 あの、使用人部屋で縫っていた頃の私が、

 こんな未来を想像できただろうか。


 ――針と糸が、夢を繋いでいく。


第26話 遠くで動き出す影


 その頃。


 男爵家の客間では、

 ある噂話が交わされていた。


「最近、公爵家で話題の仕立てがあるらしい」

「宝石の名を持つドレスだとか」


 父は、眉をひそめる。


「……そんな話、聞いたことがない」


 継母は、ゆっくりと笑った。


「でも、公爵家と深く関わっているとなれば……」


 その視線が、

 かつて屋敷の隅にいた少女を思い出していたことに、

 まだ誰も気づいていない。


 ――けれど。


 噂は、必ず辿り着く。


 それが、どれほど遅くとも。

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