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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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8/8

【エピローグ】

夜。


王城の執務室は、静まり返っていた。


燭台の火が小さく揺れる。


机の上には、整然と綴じられた報告書。


表紙には、たった一言。


「成功」


デルガはそれを見つめている。


断罪は成立した。


論理は破綻なく通り、

王子は満足し、

反乱も起きず、

秩序は保たれた。


完璧な遂行。


職人としての仕事は、非の打ち所がない。


だが。


(燃えなかった)


胸の奥に残るのは、熱ではない。


空虚。


かつて断罪式の夜には、

城下からざわめきが届いた。


興奮した議論。

怒りと涙。

翌日も続く余韻。


祭りのあとに似た、疲労と高揚。


今日は違う。


窓を開ける。


広場は静かだ。


灯りもまばら。

笑い声もない。


人々はすでに日常へ戻っている。


断罪は、消費された。


記憶に残る炎にならず、

ただ理解され、

納得され、

処理された。


デルガは椅子にもたれる。


(制度疲労か)


長く続いた儀式。


婚約破棄。

悪役令嬢。

断罪。

歓声。


同じ構図を、何度も何度も繰り返してきた。


人は慣れる。


慣れは熱を奪う。


だが——


別の可能性が、脳裏をよぎる。


(人々が成長したのか)


かつては単純な善悪で熱狂できた。


だが今日の群衆は、

善の裏側を理解した。


理屈を受け止めた。


歓声よりも、思考を選んだ。


もしそうなら。


断罪という装置は、


時代に追いついていないのではないか。


デルガは目を閉じる。


自分は制度を守った。


だが。


制度は、本当に守るべきものか。


燭台の火が揺れる。


報告書の「成功」という文字が、

どこか薄く見える。


彼は静かに呟く。


「……次は、燃えるのか」


答えはない。


夜は深い。


広場は静かだ。


断罪は成立した。


だが、燃えなかった。


それが、


彼の胸に残る、


何より確かな事実だった。


――第2話 終了。

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