【クライマックス】
夜の大広場。
舞台はこれまでで最大規模に膨れ上がっている。
火柱が同時に上がり、空気が震える。
楽団は高らかに鳴り、光の魔術が紋章を夜空へ描く。
群衆はすでに興奮の頂点にあった。
断罪対象の名が呼ばれた瞬間、
歓声と罵声が混じる。
だがその中心に立つのは、若き宰相候補カイ。
彼は両手を広げる。
沈黙が落ちる。
計算された、完璧な間。
「皆様!」
声はよく通る。
「正義は恐れるものではない!」
歓声。
「怒りは浄化です!」
群衆が叫ぶ。
「断罪!断罪!」
炎が高く上がる。
音楽が一気に高まり、鼓動のように響く。
涙を流す者。
拳を振り上げる者。
笑っている者。
そのすべてが、同じ方向を向いている。
カイの言葉は熱に溶ける。
正義と怒りが一体化する。
壇下で、デルガはそれを見上げていた。
かつて彼が恐れた激情。
今は、整然と、美しく、制御されているように見える。
だが。
彼の胸に、冷たい問いが浮かぶ。
「それは正義か……娯楽か」
誰にも届かない声。
炎が轟音を立て、音楽が鳴り響き、
問いは熱に飲み込まれる。
群衆は歓喜する。
断罪は、最高潮を迎える。
そして。
完璧に、成功する。
【エピローグ】
夜。
王城の執務室。
灯りは一つだけ。
机の上に報告書。
・支持率 78%
・経済効果上昇
・若者参加希望者増加
成功。
数字は美しい。
理想的な成果。
完璧な成功。
デルガは椅子に深く座る。
紙を見つめる。
だが胸に残るのは、違和感。
断罪は――
若さを利用する制度から、
若さが飛び込む娯楽へと変わった。
強制ではない。
志願。
転落ではない。
舞台。
そして今。
怒りが商品化された。
演出され、
売られ、
消費される。
窓の外。
遠くでまだ歓声が聞こえる。
祭りは終わらない。
デルガは静かに目を閉じる。
正義が娯楽になるとき、
娯楽はやがて正義を飲み込む。
境界は曖昧になり、
やがて消える。
炎は美しい。
人を集め、
心を揺らし、
国を動かす。
だが。
制御不能になれば――
国をも焼く。
デルガは窓を閉める。
歓声が遠のく。
だが火種は、残っている。
第6話 終了。




