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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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22/47

【幕3】群衆の変質

次の断罪の日。


広場は、すでに熱を帯びていた。


まだ舞台の幕も上がらぬうちから、怒号が飛ぶ。


「今日は誰だ!」


「裏切り者を出せ!」


笑いと興奮が混ざる。


以前は、緊張があった。


真偽を見極めようとする空気。


だが今は違う。


結論が、先にある。


対象が姿を現した瞬間、罵声が浴びせられる。


「断罪!」


「断罪!」


証言はまだ始まっていない。


それでもコールは揃う。


断罪は、審理ではない。


“確認作業”。


皆が期待する結末へ、整然と進む儀式。


カイはその熱を楽しむように、間を取る。


群衆は待ちきれずに叫ぶ。


怒りは、自然発生ではない。


習慣になっている。


壇上の令嬢は震えている。


だが彼女は顔を上げる。


涙を拭い、かすれた声で言う。


「せめて……美しく散らせてください」


一瞬の静寂。


そして拍手。


歓声。


彼女は“演者”として振る舞った。


恐怖に飲まれるのではなく、


役割を受け入れる。


断罪は、転落ではない。


一種の名誉。


舞台の中心に立ち、


名前を刻まれる機会。


デルガの背筋が冷える。


(これは……危険だ)


若者が、炎を恐れなくなる。


むしろ、求める。


断罪は罰ではなく、


通過儀礼へと変質している。


夜。


王城。


王子アルベルトは報告書を閉じる。


「支持率は上がっている」


淡々とした声。


「治安も安定した」


数字は、嘘をつかない。


デルガは低く言う。


「炎が大きくなりすぎれば、制御できなくなります」


王子は窓の外を見つめる。


広場ではまだ歓声が続いている。


「それでも、今は必要だ」


短い言葉。


王は現実を見る。


数字。


安定。


国の均衡。


デルガは構造を見る。


炎の連鎖。


怒りの習慣化。


参加型断罪。


どちらが正しいのか。


答えは出ない。


ただ一つ確かなのは、


群衆が変わったということ。


かつては炎を恐れた。


今は炎を欲する。


そして炎の中心に立つ若者もまた、


それを恐れない。


広場の歓声が、夜空に溶ける。


デルガの胸には、静かな不安が残る。


火は美しい。


だが。


美しい火ほど、


広がるのが早い。


幕3、終了。

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