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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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16/35

【結末】

夜。


王城の高窓から、王都の灯りが静かに見えている。


かつてなら、あの広場の中央に炎が上がっていた。

若き令嬢が泣き、若き貴公子が拳を握り、

民衆が正義の名を叫んでいた。


今は違う。


ただ、灯りが点々と揺れているだけだ。


デルガは執務机の前に立ち、窓に背を向けたまま呟く。


「……私は、若さを燃やしていた」


誰に聞かせるでもない独白。


制度を守っていると思っていた。

国を安定させていると信じていた。

断罪は均衡装置だ、と。


だが違った。


均衡を保つために、

若さの未熟を舞台に上げ、

嫉妬を煽り、

承認欲求を刺激し、

未来への不安を物語へ変え、

その炎を“必要な熱”と呼んでいただけだった。


守護者のつもりで。


実際は――煽動者だった。


王子アルベルトは恋を拒否した。


「私は王になる。恋は不要だ」


あの言葉が、すべてを止めた。


恋がなければ、三角関係は生まれない。

嫉妬が膨らまなければ、悪役は生まれない。

若さが舞台に上がらなければ、断罪は成立しない。


未熟を利用しない選択。


それを、王はした。


デルガは椅子に腰を下ろす。


重い息を吐く。


「断罪は……若さと未熟さを利用する儀式だった」


自然ではなかった。

善でもなかった。

必然ですらなかった。


構造だった。


そして、依存だった。


若者依存型の安定装置。


王が拒否すれば、発生不能。


その事実は、あまりにも静かに、あまりにも残酷に、制度の正体を暴いた。


デルガは初めて、自分の立場を変える。


制度を支える側ではなく。


制度そのものを疑う側へ。


それは裏切りか。

それとも進化か。


まだわからない。


窓の外。


夜は深い。


広場に炎はない。


叫びもない。


ただ、穏やかな風が旗を揺らしている。


若さは、今夜、燃やされていない。


デルガは目を閉じる。


「……これが、始まりか」

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