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悪役令嬢断罪請負人デルガ

作者:南蛇井
最新エピソード掲載日:2026/02/13
――断罪のない国――

この王国には、「断罪」と呼ばれる公開裁定制度があった。
罪人を舞台に立たせ、群衆の前で裁き、炎のような感情をもって秩序を保つ――それは司法であり、儀式であり、娯楽でもあった。

制度を支えてきたのは、老練な官僚デルガ。
彼は断罪を「若者の怒りを吸収する装置」として設計し、国家の安定を守ってきた。

だが、時代は変わる。

若手宰相候補カイの登場により、断罪は急速に演出化・洗練化される。
透明性、公平性、合理性を徹底した“進化した断罪”は民衆の支持を集め、国家的エンタメへと到達する。

一方で、デルガは違和感を覚える。
断罪は正しくなった。
だが「正しすぎる」ことで、若さや人間性を静かに削り始めているのではないか――。

象徴的存在として制度に翻弄され続けた少女レイアは、成長し、自ら断罪の被告席に立つ。
理性的で美しいその姿は、断罪がついに**感情を必要としない“処理”**へ変質したことを示していた。

王子アルベルトは、国家としての決断を下す。
「断罪制度そのものを、断罪する」。

制度は検証の対象となり、
怒りの市場化、若者の消耗、物語による単純化――
断罪が抱えてきた構造的罪が白日の下に晒される。

そして次に問われるのは、さらに根源的な問題だった。

「国家は、物語を乱用してきたのではないか」

デルガは責任を引き受け、自らを被告席に置く。
カイは物語の必要性を訴え、激しく反発する。
だがレイアの一言が、すべてを変える。

「私たちは、役ではありません」

善と悪、英雄と悪役――
その単純な構図こそが、人を消費してきたのだと、民衆は初めて気づく。

断罪は続く。
だが、物語としては終わる。

やがて断罪制度は正式に廃止される。
デルガは引退し、城を去る。
カイは宰相に就任し、「物語ではなく政策で勝負する政治」を選ぶ。
レイアは象徴ではなく、一人の市民として社会に関わり続ける。

最後に残るのは、舞台のない広場。
装置のない国家。
そして、問い続ける人々。

断罪は国家の鏡だった。
鏡を壊したのではない。
国家はようやく、自分自身の顔を直視できるようになったのだ。

物語は終わる。
だが、国家は続く。

問いながら。
選びながら。
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