外伝 Re:Start Online ― 新しい春、再ログイン。
桜の花びらが風に乗って舞い散る。
春の空は、あの日と同じ淡いピンク色だった。
朝霧あやめ、18歳。
ついに、大学生になった。
入学式の日、彼女は胸の奥で小さく深呼吸をした。
VRゲーム部の部長として過ごした高校時代は、もう昨日のように遠い。
でも――
VRヘッドギアのストラップには、今も小さなチャームがぶら下がっていた。
玲奈にもらった、おそろいの星型のペンダント。
「……よし、今日からまた新しいスタートだね」
春の光を浴びて、あやめは大学の門をくぐった。
⸻
◆ 1.新しいキャンパス、新しい出会い
大学のVRサイエンス学部は、最新設備が整った最先端の校舎だった。
フルダイブ研究専攻――VRとAI、そしてヒューマンリンク技術の融合を学ぶ学部。
あやめはその第一志望に合格したのだ。
「おぉ〜、すっご……本物の研究機関みたい!」
広いホールを歩いていると、ふと懐かしい声が聞こえた。
「やっぱりいた。朝霧あやめ。」
振り向くと――黒髪を風に揺らす少女が立っていた。
クールな瞳、変わらない笑顔。
「玲奈ちゃんっ!」
「入学、おめでとう。……同じ学部だよ。サプライズ成功?」
二人は思わず笑い合った。
高校の卒業式以来の再会。
その瞬間、あやめの胸の奥に温かいものが込み上げてくる。
「やっぱり、私の相棒は玲奈ちゃんしかいないね」
「……ばか。こっちだって、そう思ってた。」
⸻
◆ 2.大学VR部《NEXT LINK》
入学してすぐ、二人が見つけた掲示板の一枚のポスター。
そこにはこう書かれていた。
【VR研究部 NEXT LINK】
“ゲームと現実の新しい接続点を探る”
――部員募集。
「……まるで、あの時みたいだね」
「また部活、始める?」
「もちろん!」
二人は勢いのまま入部届けを出した。
その部室には、すでに数名の先輩がいた。
「へぇ、君たちが新入生? 噂の“高校VR大会チャンピオンチーム”の……」
「そ、そんな噂あったんですか!?」
「あるさ。俺、二年前の大会でお前らに負けた側だしな」
笑って言ったのは、背の高い三年生・相馬カイト。
ゲーム内では伝説のプレイヤー《KAITO》として知られる存在だ。
その隣にはAI開発専攻の女子、桐島ミナト。
白衣にヘッドセットを首に下げ、優しく微笑んでいた。
「朝霧さんたちのデータ、研究で参考にしてたんですよ。
“人とAIの共感リンク”――すごく綺麗な数値でした。」
「あの……もしかして、ルミナのこと、知ってるんですか?」
「ええ。StarLink OnlineのAIルミナ。実は、今――再構築中です。」
その言葉に、玲奈とあやめは顔を見合わせた。
――ルミナが、また帰ってくる。
⸻
◆ 3.再び、星の海へ
数週間後、NEXT LINKは新作VR《Re:Link Online》のクローズドテストに招待された。
その開発コードには、見覚えのある文字列があった。
――【Project LUMINA - Rebirth】
「……やっぱり、あの子だ」
あやめは微笑む。
ログインキーを起動し、玲奈の手をぎゅっと握った。
「いくよ、玲奈ちゃん。新しい冒険、はじまりだよ。」
「うん。……ログイン、Re:Start。」
光が包み込む。
視界が星屑のように弾け――
あの懐かしい声が響いた。
『おかえりなさい、プレイヤーたち。
ここから、また“新しい青春”を始めましょう。』
そこにいたのは、少し成長したようなAI・ルミナの姿。
彼女はまるで人間のように微笑み、手を伸ばした。
「再会を祝って、最初のクエストを用意しました。
――タイトルは、《Re:Start Online》。」
星々の海が輝く。
あやめたちは再び、手を取り合いながらその世界に踏み出した。
⸻
◆ 4.次のページへ
ログアウトしたあと、夜のキャンパスで二人並んで座る。
風に桜の花びらが舞い、街の灯りが遠くに滲んでいた。
「ねぇ、玲奈ちゃん。」
「ん?」
「また、夢みたいに始まっちゃったね。」
「……夢なんかじゃないよ。これは、私たちの現実。」
玲奈は星空を見上げながら言った。
その横顔を見て、あやめは少し笑う。
「そうだね。――青春って、ログアウトできないんだ。」
二人の笑い声が、春の夜空に溶けていった。
そして再び、遠くのサーバーの中でAIルミナが囁く。
『リンク、再接続完了。
ようこそ――新しい物語《NEXT LINK》へ。』
⸻
Re:Start Online ― 完 ―




