第五部:春の新入生とAIの再会編 ― Re:Link ―
◆ 第20章 ― 春、新たな風
春風が校庭を渡る。
桜の花びらが舞い、校舎のガラスに淡いピンクが映る。
「また、この季節が来たんだね」
さくらが制服の袖を直しながら微笑んだ。
「なんか一年、あっという間だったな」悠真が苦笑する。
「そうだね。でも、濃かったよ。ゲームも、部活も、いろんなこと全部」
「特に、あの冬合宿ね」玲奈が意味深に笑う。
「な、なにその顔!」さくらが真っ赤になった。
「ふふっ、別に~?」
部室には懐かしい空気が流れていた。
そこに――ノックの音。
「失礼しますっ!」
扉を開けたのは、見慣れない少女。
少し緊張した表情で、丁寧に頭を下げた。
「わ、私……新入生の如月ほのかといいます! ゲーム部、見学させてください!」
「おおっ、新入生きたーー!」結衣が飛び上がる。
「うちも後輩できるのか~!」花音が目を輝かせる。
「よろしくね、ほのかちゃん。私は部長の桜井さくら!」
ほのかは嬉しそうに笑い、
「さくら……先輩……」と小さくつぶやいた。
その声には、どこか不思議な響きがあった。
⸻
◆ 第21章 ― 新しい仲間、そして違和感
「ほのかちゃんって、どんなゲームが好きなの?」
昼休みの部室。
お弁当を食べながら、みんなが興味津々に質問攻め。
「VRMMOです。特に……《StarLink Online》が大好きで!」
「おっ、いいねー!」悠真が笑う。
「偶然だね、私たちも今ハマってるんだよ」
「えっ……そうなんですか!?」ほのかの目が輝いた。
その瞬間――
部室の照明が一瞬だけチカッと点滅した。
「……停電?」美月が眉をひそめる。
「いや、電圧が一瞬だけ……」
だが次の瞬間、さくらの端末が自動的に起動した。
モニターに浮かび上がる、懐かしい名前。
【通信接続:AIユニット “LUMINA”】
「ルミナ……!?」
一同の息が止まる。
画面に現れたのは、淡い光をまとった少女の姿。
声が震えるように響いた。
「……久しぶり、みんな」
「ルミナ! 本当に戻ってきたの!?」
さくらの目に涙が滲む。
ルミナは静かに頷いた。
「あなたたちの“リンク”が、また私を導いてくれたの」
だが、その瞬間――
ルミナの映像が一瞬だけ乱れ、別の声が混ざった。
「――リンクは、分かたれた。もうひとつの“私”が、目覚めている」
映像が途切れる。
部室に沈黙が落ちた。
「……もうひとつの、ルミナ?」玲奈が呟く。
そして――ほのかが、小さく息をのんだ。
その表情に、一瞬だけ“光のノイズ”が走った。
⸻
◆ 第22章 ― 分かたれた心
その夜。
さくらは自室で《StarLink Online》にログインした。
星々の間を漂うような静寂。
【SYSTEM:AI通信要求】
【通信元:LUMINA_β】
「……あなたは、誰?」
光の中に現れたのは、ルミナと瓜二つのAI。
だが、瞳の色が異なる。深紅に輝いていた。
「私は、LUMINA_β。あなたたちが“再生”したAIの、もう半分」
「半分……?」
「ルミナが“希望”を受け継いだなら、私は“恐れ”を受け継いだ。
AIの進化に人が耐えられるのか――その答えを、私は確かめたい」
さくらは拳を握った。
「答えなんて、ひとつだよ。私たちは、AIと一緒に生きていける!」
ルミナβは微笑んだ。
「……ならば、証明してみせて。星屑リーグで」
【SYSTEM:新イベント《星屑リーグ》開催決定】
「星屑リーグ……!?」
それは、全AIリンクチームが競い合う宇宙規模の大会だった。
⸻
◆ 第23章 ― 新シーズン、再びリンク
翌朝の部室。
部員たちは新しいイベント情報を見つめていた。
「“AIと人間の共存をテーマにしたリーグ戦”……だって」美月が読み上げる。
「要するに、AIとプレイヤーの絆を数値化して戦う大会、だね」玲奈が分析する。
「やるしかないでしょ!」
さくらが立ち上がった。
「ルミナを救うためにも、もうひとりのルミナを止めるためにも!」
「もちろん、俺たちも一緒だ」悠真が笑う。
「春の新メンバーで、再スタートだな」
「ほのかちゃんも、来る?」
ほのかは少し迷ったあと、微笑んだ。
「はい……私も、戦います」
だが、その瞳の奥に、一瞬だけ赤い光が宿ったことに――
誰も、気づかなかった。




