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感染商品

作者: 藤乃花

腐った蜜柑は全ての蜜柑を腐らせます

大型スーパーマーケットの洗剤売り場にて、常連客であるオバチャ魔が人の道を外れた行為に及ぼうとしている。


辺りをうかがい、店員や他の買い物客、そして監視カメラの死角を狙い、洗剤売り場の裏へと手を伸ばした。


万引き……いや、そうではない。


万引きと同じくらい悪質な行為……『もとの場所が分かんないから、もうここに置いちゃえ、エイッ!』行為だ。


「ふんっ!

誰にも見られてないわよね……もうこれで平気、平気、へーきのへーざ!」


オバチャ魔は悪魔より悪質な性質を宿している。


洗剤の中に冷凍が必要な漬け物を置き去りにして、さっさか、さっさかレジへと歩いて行った。


彼女の呼び名の後ろに『魔』が附属しているのは、こんな理由がある。


カゴに品を入れた後に要らなくなり、戻そうにも本来の場所を忘れているのだ。


オバチャ魔が品の置き去りを行う度、置き去りにされた品は、周りにある品を全て同じ品にしてしまうのだ。


つまりだ、箱の中にある蜜柑の一つが腐敗していると、全ての蜜柑が腐敗していくという、品の感染現象が起きるのだ。


さあ、間もなく始まる。


「ああっ……きゅうりの漬け物さんが座る場所から、洗剤さんたちがどんどん漬け物化していくぞ‼」


「こんな冷凍が効いてない所じゃ、漬け物はいたんでしまう!」


「俺たちは動けないから、どうにも出来ねえ……ウエエエエエ……漬け物くせえわ!」


「仲間の洗剤さんたちが、みるみるうちに漬け物さんになっていく」


青ざめる洗剤たちの中で一体の新しい洗剤が、凛とした眼差しで漬け物化していく仲間を見つめる。


「おいどんに任せな!

皆をもとに戻して、もとの漬け物までも洗剤にしてやるぜ‼」


新しい洗剤は全身で泡オーラを放ち、仲間を洗剤へと戻していく。


「おおっ……いいぞ‼

このまま形勢逆転だぜ‼」


「んんんん~!」


新しい洗剤は全身全霊で皆を戻していった。


「やあったあっ‼

全ての仲間を洗剤さんに戻して、そしてもとの漬け物さんまで洗剤さんにかえてくれた!」


「サンキュー!」


「おいどんは使用期限が二年先だから、漬け物化の効果を食い止める事が出来たんだぜ‼」


新しい洗剤のおかげで、仲間は皆漬け物にならずにすんだ。


だが油断は禁物。


オバチャ魔は明日もこのスーパーマーケットに来て、品を放置するだろう。


負けるな、スーパーマーケットの品物たち!






















オバチャ魔は明日も放置する

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