記録集:「2034年 日本 非戦争統治経過録」 第1章〜第5章
(編集部注:本記録は実名・事実の裏付けが困難な状況下で収集されたものであり、記録者の主観が含まれる。だが、当時の空気感を最も忠実に残す断章として、削除せず収録する)
第1章:海底の影
発生日:2030年2月
場所:日本海 大和堆周辺
記録種別:初期監視活動報告
日本海の海底で、中国艦船が「資源調査」と称した掘削準備を開始。
海上保安庁は、巡視船2隻を派遣。これは、あくまで“民間監視”という政治判断によるもので、自衛隊の出動はなかった。
中国側は、軍艦を護衛につけており、実質的な軍事展開となっていた。
この時点で、日本は軍事行動に移ることなく、「国際法違反の疑い」として事態を外交的に処理しようとしていた。
「自衛艦が出るのはエスカレーションだ」
——外務省非公式覚書より
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第2章:照射
発生日:2030年2月15日
場所:日本海中部海域
記録種別:軍事対峙事例
護衛艦「いなづま」が海保艦艇の支援のため現場に急行。
その途上、中国海軍のフリゲート艦から、高出力レーザーが照射される。
日本側は対抗処置として、照射し返す。
直後、中国艦が“進路異常変更”を実施し、側面から体当たりを図る。
「いなづま」は危機回避のため、警告射撃を行い、艦橋部に命中。
これが、最初の“実弾使用”となる。
「火器使用は防御目的である」
——防衛省報道官
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第3章:宣戦布告
発表日:2030年2月20日
発信元:中国中央軍事委員会
記録種別:外交通告・開戦声明
中国政府は、先の交戦を「主権侵害への明確な武力攻撃」と定義。
正式に日本に対して「武装侵攻を開始する」と通告。
日本政府は、戦争状態の宣言を避け、自衛隊に防衛出動を命令。
内閣は「局地的な偶発事案として沈静化を目指す」と声明。
一方、国民の間には、「戦争という言葉を避けることこそ、現実逃避だ」という声が広がっていた。
「これは戦争だろう。違うというなら、なんだと言うんだ?」
——SNS投稿(削除済み)
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第4章:日本海の敗北
期間:2030年5月18~5月21日
記録種別:海軍戦力交戦報告(断片)
日本海に展開した中国艦隊は3方面に分割:
1.日本艦隊の掃討を担う打撃艦隊
2.上陸部隊を護衛する侵攻艦隊
3.米軍介入を警戒し、沖縄南方に展開する抑止艦隊
海上自衛隊は、迎撃のために現存する全艦を投入。
だが、物量・飽和攻撃・防御型ドローンの前に壊滅。
特に、自衛艦の対空防御システムは、ドローンの群れによって機能不全に陥った。
戦闘記録によれば、数時間ごとの交代攻撃が繰り返され、日本艦隊は補給も整備もできぬまま、次々と撃沈されていった。
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第5章:インフラ破壊
発生日:2030年5月19日〜5月21日
記録種別:施設機能喪失報告
中国軍は、日本全土への本格上陸を行わなかった。
その代わりに選ばれたのは、国家機能の急所だけを狙い撃つ戦略だった。
・火力発電所の制御棟へのピンポイント爆撃
・ダム放流機構のミサイル破壊
・港湾クレーンと給油設備の遠隔無人攻撃
攻撃兵器の多くは、自立誘導型ドローンまたは誘導ビーコン連携ミサイル。
ドローンがダムの座標上空に到達→自機を最終誘導ビーコン化→中国本土から発射された弾道弾が命中、という**“連携攻撃”が実行された。**
発電停止、断水、物流崩壊。
日本は、“人命は奪われていないのに、生活が機能停止する”という新しい戦争を体験することとなった。
「人を殺さない戦争は、戦争ではない。
だが、戦わずに殺すより、
生かして無力化する方が、支配としては優れている。」
——未確認戦略文書より