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独り歩き  作者: 殿邑誠
負の遺産
7/50

考え事

美術館は非常に興味深い展示で溢れていた。

なんて言えば嘘になってしまう。

しかし嘘と言ったら故意的なものになり悪者が生まれてしまうのでここでは間違いとしよう。

そう間違いだ。

この展示にも間違いがあった。

『世界の小石展』

このタイトルには2つの間違いがある。

まず世界中から小石は集まっていなかった。

日本各地から集められた小石が展示されていたのだ。

一瞬、世界の小石/展ではなく世界の小石展であるのかと思ったがそれにしては規模が小さい。

2つ目、先ほど小石が展示されていたと言ったがあれは嘘だ。

全て小石ではなく、石だった。

僕の爪先から膝まで程度の大きさの石が飾られていたのだ。

解説も何もない石。

面白く無かった。

一応全ての石を眺めてから2人で出ることにした。

そして現在に至る。

僕と輪は美術館を後にして近くのカフェに向かっている。

茶室という案も出たがそういう気分にはなれなかった。

今は控えめな甘さではなくガッツリした甘さが欲しかったのだ。

「なに頼むの?」

「ガトーショコラ」

「私フレンチトースト」

「いいね」

「一口ちょうだいよ」

「フレンチトースト一口くれるならいいぞ」

現在時刻、12時15分。

先輩、黒谷(くろたに)先輩との戦闘から2時間程度しか経っていない事実が恐ろしい。

実はまだ背中が痛い。

2回も壁に打ち付けられているのだから当然だ。

恐ろしく強い人だった。

技1つで僕のことを殺せる。

生かすも殺すもできる人だ。

僕よりも圧倒的に高い技量だ。

黒谷先輩みたいな人がたくさんいるのだろうか。

だとしたら『お宝』なんて探せる気がしない。

『お宝』狙いじゃないって嘘をつきながら生活すればいいだろうか。

無効坂高校は一般人には手を出さないらしいし良い案かもしれない。

自分よりちょっと強い人ならまだ挑む気があるし、弱い人ならもっとやる気が出る。

しかし圧倒的な強さの相手に無策で挑むなんてよろしくない。

精神衛生的にも健康的にもよろしくない。

入学前にいろいろ考えないといけない。

場合によっては任務遂行不可能ってことで普通に無効坂高校で三年間過ごすこともあり得るだろう。

「いらっしゃいませ」

その声で一気に現実に戻された。

「何名様ですか?」

「2人です」

店員の問いに輪が答える。

いつのまにか『フラン・フラン』についていたようだ。

「空いてる席にお座りください」

店員さんにお礼を言って2人ようのテーブルに向かい合って座る。

「ねぇ」

「どうした?」

店員さんが水をテーブルに置く。

「ご注意はお決まりでしょうか?」

「ガトーショコラで」

「私はフレンチトーストをお願いします」

店員さんが離れるのを待ってから輪が口を開く。

「何考えてたの?」

「え?」

「心ここにあらずって感じだったよ?」

バレていないわけがないか。

「何があったと思う?」

「…そうだねぇ」

輪が、()()が目を開く。

黒く吸い込まれそうな瞳。

「まず、少し汚れがついている服。転んだみたいな汚れのつき方だね」

隼輪が僕の服を指差してそう言った。

「あと、とうくん、さっきから腰を庇ってるよ。前は腰痛あったみたいだけど、最近は無かったよね?」

鋭い指摘が続いている。

鋭い視線で鋭い指摘だ。

「とうくんはさぁ」

隼輪の指が今度は僕の顔へと向けられる。

「誰と戦っていたのかな?」

「お待たせいたしました」

声の方を見てみると満面の笑みの店員さんがいた。

「こちらガトーショコラと」

僕の目の前にガトーショコラが置かせる。

「フレンチトーストでございます」

フレンチトーストが輪の前に置かれる。

「ごゆっくりどうぞ」

店員さんがお辞儀をしてテーブルから離れる。

「…まずは食べようか」

「そうだね、一口ちょうだい」

輪の方へとガトーショコラのお皿を押す。

輪もフレンチトーストを僕の方へと寄せてくれた。

まずは糖分を摂取しよう。

輪に話すのはそれからでも問題ないはずだ。

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