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独り歩き  作者: 殿邑誠
負の遺産
3/50

炎の大蛇は千頭絵を喰む

僕を殺しに来たらしい目の前の黒い服を着た男は、赤い目だった。

赤い目。

土岡正志と同じ、赤い目。

つまり、この男は『超常力者』だ。

『超常力者』

自らのエネルギーである気を使い、説明のできない事象を引き起こす能力を持つもの。

「…僕はラーメンを食べに来ただけなんだけど」

彼は赤い目で僕のことをじっと眺めている。

「俺は無効坂高校一年の黒谷だ。よろしくな後輩」

無効坂高校の生徒で『超常力者』、更には僕を殺しに来てるってことは

「先輩も『お宝』狙いですか」

「あぁ、そうだ。だからライバルが増える前に殺そうと思ってな」

「僕程度が邪魔になるとは思えないんですけどね」

「謙遜するな『兵装使い』。千頭絵家の四強に数えられる男が弱いわけないだろう」

そこまでの情報は広まっているわけだ。

「というかなんで先輩は僕の合格を知っているんですか?」

「邪魔になりそうなやつはマークしといたんだよ」

先輩は表情ひとつ変えずにそう言った。

クソ。まさかの邪魔者扱いかよ。

というかこの先輩、面がいいな。

イケメンだ。

「じゃあこっちからも質問だ」


その瞬間、その場の空気が変わった。


先輩の全身から気が立ったのがわかる。


「家にとっとと帰って入学辞退を学校に送るか」


先輩の赤い目が、()()光る。


「今すぐ俺に殺されるか」


そこからは一瞬だった。

先輩は手を親指、人差し指、中指でボールを掴むような形にし「蛇」と呟いた。その瞬間、先ほど二つに割れた炎の大蛇が元に戻り先輩の頭上を飛び越え僕に突進し背後の車の往来が激しい大通りへと突き飛ばした。

まずい。

僕は即座に跳ね起きる。

が、炎の大蛇の大きな口が2本の足で直立したばかりの僕を掴みラーメン店向かい側の建物の壁へと固定する。

「チッ」

背中に鈍い痛みがある。

「噛まれる直前に気でガードしたか。なかなか良い反応じゃないか」

先輩がこちらへと歩いてくる。

「あぁ、『実験空間』を展開したから俺たち以外の人物はいない。まぁ詠唱無しの空間だから特にバフ・デバフ、地形変化はない。安心しろ」

『実験空間』、『超常力者』が持つ独自の空間。

「さぁどうする。辞退か、死か」

まずい、この人思ったより手練れだ。

気の操作が上手い。

あんなに早く蛇を動かせるなんて。

炎の大蛇は僕の胴体を壁に押さえつけるように噛んでいる。

気のガードが無ければ焼け死んでいた。

この人相手にどう動くべきだろうか。

「おい」

先輩のよく通る声が空間に響く。

「なぜ動かない。『兵装』があるだろう」

なるほど。そこまでお見通しというわけだ。

「もうお前が辞退する気がないことはわかっている。どうせ無理だと思っていた」

「…」

「どうした?動かないならこのまま殺すぞ」

炎の大蛇の出力、火力が上がるのがわかる。

先輩の気の放出量も上がっている。

このままだと僕は焼け死ぬだろう。

しかし僕にはここから打開する術をもっていない。

僕は土岡やこの先輩のような『超常力者』ではないのだ。

しかし僕は『兵装使い』

『兵装』と呼ばれる気を流し動かす武器を扱う兵士だ。

先輩には、一つぐらい、お見せしても良いだろう。

僕は息を吐く。

吐く。

吐く。

吸う。

吸う。

吸う。

呼吸を整える。

整える。


「第1級兵装」

先輩の表情が変わるのがわかる。

その表情がどんな感情を表しているのかはわからないが、それでも良い。

「筋力補助装置」

僕は『兵装』に気を流す、全体に仕込まれた兵装に。

「天之手力男神、発動」

僕は右腕を振った。

力任せに。

僕の身体が自由になったのを感じた。

地面に足がつくのを感じる。

炎の大蛇は縦に二つに割れていた。

先ほどと同じように。

しかし先とは違うところがあった。

先輩の表情は無表情なんかではなかった。

目は見開き、口は半分開かれている。

感情ははっきりとわかる。

驚き。

その感情が先輩の顔を支配していた。

僕はそんな先輩に向かって言う。

「反撃開始ってやつですよ、先輩」

今回短めです。

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