幼馴染
「おい、輪起きろ。すぐ離れるよ」
僕は寝ている輪の肩を揺らす。
返事はない。
「おい、おい?」
もう一度肩を揺らす。
またしても返事はない。
「…まさか」
僕ら輪の腕を掴んで脈を取ろうとする。
その時、僕が掴んでいた腕が僕の手から離れる。
気づくとドヤ顔の輪に手を握られていた。
「おはよう、マイダーリン。いい朝だね」
「…いつから起きてた?」
「最初に私の名前を読んだ時だよ、ダーリン」
「それウザイからやめろ。ほら、さっさと行くぞ」
輪は起き上がり周りを眺める。
「これは酷いね。君のお姉さん?」
「あぁ、処理はこっちがやるから取り敢えず逃げよう。
今寝てる犯罪者共が起きたら厄介だ」
「分かった。バス呼ぶね」
輪はそう言ってスマホを取り出して電話をかけていた。
さて、管理人さんだけでも拘束しておいたほうが良いかもしれない。
「連絡したよ、すぐ来てくれるって」
「分かった」
僕は旅館の残骸の方を眺めてみる。
うぅむ、たまに手が飛び出したり足が飛び出したりしている残骸の山だが、管理人さんを縛れるようなものは無さそうだ。
「輪、なんか縛れるものとか持ってないか?」
「ごめん、私そんなニッチなプレイはちょっと…」
「いやプレイとかじゃなくて管理人さんを縛っておかないといけないと思ったんだけど、持ってないよな」
「持ってるけどね」
「え?なんで?」
「この縄使っていいよ」
輪はそう言って縄を差し出してくる。
どこから出したんだろうか。
「あ、ありがとう。使わせてもらうね」
僕はそう言って縄を受け取り、管理人さんを縛り上げる。
足も腕も動かせないように縛った。
「よし、これで大丈夫だろ」
「…」
「どうした?」
「いや、私は名探偵なのかなって思ってさ」
「…お前は名探偵だよ」
「優しいね」
「幼馴染だからな」
「幼馴染ねぇ」
「あぁ幼馴染だ」
そう、僕たちは幼馴染なんだ。
輪は名探偵かもしれない。
僕は兵装使いかもしれない。
けどそれ以前に僕たちは幼馴染でありたい。
優先される幼馴染でありたい。
だから僕は何回だって言う。
幼馴染だと何回だって言ってやる。
「幼馴染なんて、そんなもんだろ」
「何それ」
僕の幼馴染は笑っていた。
僕も笑っていた。
これが幼馴染。
幼馴染なんて、こんなもんだ。




