ほんとにあったかもしれない怖い話。食人鬼。
食べたいものは、何?
って聞かれたら、自分の好きなもの言いますよね。
旨いだとか、甘い、しょっぱい、
酸っぱい、苦い、何てのが何通りもあっても、
何となくは想像できますよね。
じゃあ人は?
「いただきます。」
朝から、定番の納豆ご飯と味噌汁を堪能する。
カーテンの隙間から光が差して小さな埃がキラキラと舞っている。
目覚ましのアラームが鳴って、やっと本腰を入れて起き上がり朝食を作る。
作りると言っても準備するだけだが。
俺の名前は、鬣 里刺26才。
歳を追うごとに寝ることの優先順位が高くなっていき、仕事前にも顔も洗わなくなった俺は、そそくさとカバンを持って会社へと向かう。
つぶれた靴のかかとは、生活面が溢れている。
サボってしまおうか、なんてそんなことがいつも脳裏によぎるくらいには、人生終わっている。
向上心も責任感も皆無だが、迷惑はかけまいと生きてきた。
努力も最低限しかして来なかったし、楽しいこと優先で、今が良ければそれでいいと今でも思っている。
いつだったか、会社の同僚に仕事が楽しいか聞いたことがある。
そのときは、「知らないことを、知ることが役割をもらっている様で楽しい。」
なんて言っていたな。
そんな人間いたんだな。
それが俺の率直な感想だった。
きっと俺は、これからもそうなのだろう。
外は、寒くなり始めて冬の匂いが日に日に強くなってきていた。
今日は、快晴である。
晴れの日こそ、バイタリティが上がるってことは、ないけれど無気力にはなれる。
ゲームやアニメ、有名な人の動画を見ているといつのまにか、朝なんて日もある。
おかげで今日も眠いぜ。
住んでいるアパートから、駅までが遠い。
きっと引っ越すまで遠いのだろう。
音楽を聞きながら、石ころを蹴飛ばし駅へと向かう通勤時、この行為を始めて早5年同じ石ころならきれいな丸になっていることでしょう。
駅まで着くと、近くのアパートに人だかりができていた。
行ってみると、どうやら人が亡くなった…いや殺されたらしい?
それを聞いて少し怖くなって改札へと急いだ。
今日も同じ日常が始まる。
仕事は、難しいことはなく誰でもできる。
与えられたことを淡々とやる作業だ。
たまに、難しいことも言われるが組織がしっかりしているのか、不満を言う奴は少ない。
人か選別され、できること、できないことをその人の人生の内容で分け、公平という名の差別を経て職が与えられている。
これに該当しない職ももちろんあると思う。
努力の違いなのか、才能の違いなのか、はたまた親の違いなのか。
それでも、与えられたことができる。
ということも才能の一つなのかもしれない。
仕事だけが、全てではない。
そんなよくある言い訳を見繕っていつまでも生きていく。
昼休憩になった。
自分の居場所を探している。
よく聞く先輩の自慢話は、過去のもの。
努力もせずに、夢を語ってそれも一つの夢の形なのだろう。
与えられた毎日に満足している証拠でもある。
生きる意味として過去や夢に浸ることは、娯楽として時に人を楽しませてくれる。
例えば、宝くじが当たったら、なんて考えない人がいるだろうか。
考えただけでワクワクしてくる。
確率でいうと、一千万分の一。
誰かに殺される可能性が33万分の一。
隕石に当たる確率なんて、100億分の一。
なんて言われている。
買わないと夢は、なんて言うので、3連バラが当たりやすいなんて言うもんだから、毎年買ってはいるが当たったことは、ない。
そんな感じで自分のなりの幸せを見つけながらみんな生きている。
最後のタバコに火をつけて、時計の針を眺めていると、時計が止まってしまった。
こんなことがあるのかと、そんなちっぽけなことで今日を特別に感じてしまう。
午後の仕事が終わった。
帰り道、今日は別の道で帰ることにした。
いつもの道より人がいない。
光が少なくて、月の光が綺麗に道を照らしてくれてる。
どこかのマンションの駐車場、外灯が点滅していた。
言葉が、でなかった。
鼓動が早くなり、身体が熱をもってくる。
"それ"を見たから…聞いたからだったのか。
女性がうつむいて座っている。
そこに、血まみれの男性が横たわっていた。
女性が顔を上げて微笑んだ。
「あ…なた…も…食べる?」
その口は裂け、歯は鋭く血が滴り貪り始めた。
生きるために、食べるためにする咀嚼音が美しくて、脳を犯していく。
その音にいつのまにか聞き入ってしまっていた。
ふと、我に帰りそこから逃げる様に走った。
気持ちが追い付いてこない。
暗闇の中を、さらに見えなくなっていく世界を見ようと走った。
家に着いて、急いで鍵をかけた。
身体から、水分が溢れている。
汗、涙、尿、唾液…
もうどれくらい時間がたったかわからない。
夢だったのかもしれない。
なにより、あれが"おいしい"とわかってしまう自分の特別さを感じていた。
全身が震える。
冷蔵庫から、昨日の夜殺した人間の人肉を取り出し貪り食べる。
「ごちそうさま。」
拝読いただき、ありがとうございます。
ときたま、ホラー掲載します。
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