可哀想な小鳥
私が原因じゃない……?
「ですが、不安だったでしょう。あなたに非がないことを知らずにそのような扱いを受けることが」
それは、そうだ。
だって、十回も婚約が破談になった。
社交もできなくなってしまったし、父や弟には迷惑をかけてばかりだった。
「俺があなたとの婚姻を急いだのも、それが理由です」
ルクシナード様は、私を見つめた。
青銀の瞳には、戸惑う私が映っている。
「興味のない権力者に好かれることほど、厄介なことはないですから」
興味のない権力者……?
誰のことだろう。
「本当に好きなら、なにがなんでも手に入れるべきだ。それもせず、ただ悪戯にあなたを傷つけた罪は重い」
一瞬、ひやりとした空気は、すぐに柔和な笑みによってかき消される。
「ですが、ご安心を。ここは俺の国で、これからはあなたの国でもある。アムリファにいる以上、誰にもあなたを傷つけさせはしません」
ふわり、とシーツがかけられる。
「今日は様々なことがあって、お疲れでしょう。ゆっくり休んでください。どうか、俺にお任せを。誰にも……夢でさえも、あなたを傷つけさせません」
さすがに、夢は無理では……!?
そう思うのに、なぜだか、ひどく安心して、私の意識はゆっくりと夢に溶けた。
◇◇◇
(??? 視点)
「……は?」
私は今聞いた言葉に耳を疑った。
「はい、ですから、ミレシア嬢は、隣国アムリファで皇帝妃となられました」
皇帝妃、だと!?
「そんな、ことがーー」
そんなことが、許されるはずがない。
ミレシアは、私の最愛だ。
誰であろうと、何であろうと、手中に収めることは許さない。
そのために、今までの婚約も破談にしてきたというのに。
「……」
牙を折られた可哀想なミレシア。
哀れで可愛い私の宝石。
私は寛容だ。
小鳥とて、一度は羽ばたきたいこともあろう。
皇帝とやらが、どんな男かは知らぬが、ミレシアの真の輝きに気づくはずもない。
それならば、簡単だ。
別の女を当てがえば良いだけだ。
「……ふ」
ああ。
君を本当の意味で理解できるのは私だけ。
だから、早く私の下へ帰っておいで。
可哀想で愛しい、私の小鳥ーー。
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