侍女アキ
「未来の皇后陛下……?」
つまりーー私の結婚相手は、アムリファの皇帝ということ?
「はい。ミレシア様」
「!」
私の名前を知った上で頷いたということは、やっぱりそういうこと、よね。
アムリファの皇帝。
齢20という若さで皇位についた、とても冷酷な皇帝と言われている。
政敵を策略でばったばったと薙ぎ倒し、刃向かうものは実の兄弟でさえも容赦ないという、あの……?
恨みますわよ、お父様!!!!!!!!
良縁だー、とかなんとか言って。
良縁どころか、悪縁だ。
だって、考えてもみてほしい。
一応上位に入る伯爵家の私と、大国であるアムリファの皇帝。
結婚するメリットが無さすぎる……!!
待っているのは、真実の愛とやらに結ばれた別の愛人か、謀略の果ての死か。
どちらかなら、愛人でお願いしたいわ。
「……どちらかしら」
「ミレシア様?」
不思議そうな顔をした彼女に向き直る。
そういえば、自己紹介をしていなかった。
格好的には、侍女のようだけれど。
「私は、ミレシア・ノクシナ。マギルス国のノクシナ伯爵の長女です」
「はい。お待ちしておりました、ミレシア様。わたしは、アキ・イーデンと申します。ミレシア様の侍女を務めさせていただきます」
アキは、内巻きにカールした茶髪の髪が印象的な、美少女だ。
「アキ、あなたに尋ねたいのだけれど……」
「はい、何なりと」
「私が結婚するのは、この国の現在の皇帝陛下……で間違い無いのかしら?」
皇帝にはすでに隠し子がいて……とか、年齢的にはそれは無理があるとしても、何かこう、冷酷と謳われる皇帝陛下以外との結婚である可能性。
その可能性に縋り付くように、アキを見る。
「はい、間違いございません」
終わったわ。
私の人生、終了。
思わず、天を仰ぐ。
思い出したくも無い幼少期。
そして、幼少期の挫折から、流されるがままに生きていた今まで。
大した人生ではなかったかもしれないけれど。
さすがに、酷くは無いかしら。
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