烏滸がましい
一通り、ルクシナード様に城内を説明してもらった。城内にはルクシナード様の言った通り、たくさんの花が飾られていた。
「ミレシア、どの色にかけますか?」
賭けはどの色の花が一番多いか、よね。
赤も多かった気もするけど、青も多いような……? いや、黄色かしら。
「……黄色です」
自信がないけれど、若干、黄色系の花が多かった気がする。
「なるほど。……では、正解発表といきましょうか」
どうかしら。
ドキドキしながら、答えを待つ。
「答えはーー」
ルクシナード様は、微笑んだ。
「黄色です。大正解ですね!」
「……嬉しいです!」
やったわ!
小瓶の中のお菓子が気になっていたから、とっても嬉しい。
「ふふ、ではまずはおひとつどうぞ」
ルクシナード様は、小瓶から一粒お菓子を取り出すと、私の口元にもってきた。
えっ、この体勢で食べるんですか!?
これはいわゆる……。
恥ずかしい。
でも、それよりもお菓子に対する興味が優った。
ぱくり、と口に含む。
「ーー!!!」
甘くふんわりとした食感の粒は、ゆっくりと口の中で溶けて消えた。
「美味しい……!」
「喜んでいただけて何よりです。では、正解のご褒美に小瓶ごとどうぞ」
ルクシナード様が小瓶を手渡してくれる。
「ありがとうございます! 大事に食べますね」
毎日一粒ずつ食べよう。
「はい。……ところで」
ルクシナード様は、私の耳飾りに触れた。
しゃらしゃらと揺れる銀の耳飾りは、今朝アキがつけてくれたものだ。
「数日後の夜会の件ですが……」
数日後に私のお披露目をかねた夜会があると言っていたものね。
「ミレシアは俺の妻だと示す夜会です。ーーなので、俺の……」
「?」
ルクシナード様は、そこで気まずそうに目を逸らした。
「ルクシナード様?」
いったいどうしたのかしら。
「俺の瞳と同じアクセサリーを贈るので、身につけていただけませんか?」
「もちろんです」
私の祖国では、自分の髪や瞳の色と同じアクセサリーを贈るのは、自然なことだと思われているけれど。
アムリファでは、そうではないのかしら。
「……よかった」
ほっと息を吐き出したルクシナード様に首を傾げる。
「アムリファでは、あまりないことなのですか?」
「いえ……そうではないのですが。だって、下僕の俺が主たるあなたに、自分の色を纏って欲しいだなんてーー烏滸がましいでしょう?」
……ん?
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